米Appleにトップクラスのエンジニアを引き抜かれたとして、米国の電気自動車(EV)向け電池メーカーがAppleを提訴したと、複数の海外メディア(英Reuters米Wall Street Journal英Financial Timesなど)が現地時間2015年2月19日に報じた。

 提訴したのはEV向けリチウムイオン電池メーカーのA123 Systems。訴状によると、Appleは昨年6月ごろからA123 Systemsで重要なプロジェクトを率いていた複数のエンジニアを引き抜き始めた。AppleはA123 Systemsと競合する大規模な電池事業に取り組んでおり、エンジニアらはAppleに雇われた後、A123 Systemsと同様のプロジェクトの任務に就いたという。またA123 Systemsは5人の元従業員も提訴している。そのうちの1人は、Appleがほかの従業員を引き抜く手助けをした。これらが雇用契約に違反すると、A123 Systemsは主張している。

 Reutersは、この訴訟に関するコメントを両社に求めたが、いずれからも回答は得られなかった。またWall Street Journalは、この訴訟はAppleの自動車開発プロジェクトが報じられる中、提起されたと伝えている。同紙や英Financial Timesは先ごろ、Appleが「Titan」という秘密プロジェクトに取り組んでいると伝えていた。Appleはその第一段階としてミニバンに似た自動車を設計しているという(関連記事: Appleが電気自動車の秘密プロジェクト、FordやMercedesの元幹部が参加)。

 Reutersによると、Appleは最近、自動車業界からの雇用を増やしている。ビジネス向けSNS「LinkedIn」で調べると、米EVベンチャーTesla MotorsからAppleに移籍した人は60人以上。そのうち数十人は、ハードウエア、ソフトウエア、製造、サプライチェーンのエンジニア。またA123 Systemsが提訴した5人以外に、少なくとも6人の元A123 Systems従業員がAppleに移籍。Appleでテクニカルプログラムマネージャーなどの役職に就いているという。

 A123 Systemsは、かつて米政府機関から2億4900万ドルの助成金を受けるなど、EV用電池の有望ベンチャー企業だった。だが、開発コストの増大やEV普及の遅れから経営が悪化。2012年に連邦破産法11条の適用を申請した。その後同社を万向集団(Wanxiang Group)が買収し、中国企業の傘下に入った。2014年にはNECがA123 Systemsの電力会社/企業向け蓄電システム事業を買収している(関連記事:NECが2年ぶりの海外M&A、6000億円市場に本格参入へ)。