写真●ファルコンストア・ジャパン代表取締役社長の森本雅之氏
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 ファルコンストア・ジャパンは2015年2月18日、多機能型の仮想ストレージソフトの新製品「FreeStor」を発表した(写真)。2015年5月に発売する。同社の既存の仮想ストレージ製品群の上位製品に当たり、ストレージ群の設定を外部コントローラーから一元管理できるようにするなどSDS(ソフトウエア・デファインド・ストレージ)化を図っている。価格(税別)はストレージ容量1Tバイト当たり40万円。開発会社は、米FalconStor Software(ファルコンストア・ソフトウエア)。

 FreeStorは、PCサーバー上で動作する、多機能型の仮想ストレージソフトである。汎用のOSを別途必要とすることなく、サーバー上に直接インストールして使う。これにより、業務サーバーからは、SAN(iSCSI、FibreChannel、FCoE)ストレージとして利用できる。ストレージの資源には、外部のSANストレージなど任意のブロックストレージをつないで利用できる。

分散クラスター構成で動作する仮想SANストレージ

 FreeStorは、クラスタリング構成で利用できる。最大で128ノードまで接続し、ノード間にまたがった単一のストレージプールを作成できる。このストレージプールから任意の大きさのボリュームを任意の数だけ切り出して運用する。ノード間の接続にはイーサネットを使う。ヘッドとなるノードは存在せず、全てのノードが業務サーバーからのSAN接続の受け口となる。ノードのペアをミラーセットのように使って可用性を高める使い方もできる。

 FreeStorでは、中核となるストレージサーバー「Storage Server」のほかに、ストレージサーバーのクラスター全体を管理する外部の管理コントローラー「Management Server」がある。ストレージ全体の稼働状況を管理できるほか、運用管理ソフト(REST API経由)やWeb管理画面から管理コントローラーに対して、ストレージの設定変更や各種メンテナンス作業などを指示できる。

 ストレージプール内で、複数のボリュームにまたがったデータの重複を排除する機能も備える。このために、ストレージサーバー上での重複排除の作業をオフロードする重複排除専用サーバー「Global Dedupe Repository」が存在する。

CDP(継続的データ保護)など既存ソフトの上位互換

 FreeStorは、同社の既存ソフトの機能上位に位置する製品である。つまり、(a)データマイグレーションなどに適した仮想ストレージソフト「FalconStor Network Storage Server」(NSS)、(b)仮想ストレージの応用ソフトで、障害発生時に直前のデータを復旧するCDP(継続的データ保護)機能を提供する「FalconStor Data Protector」(CDP)、(c)仮想ストレージを応用したVTL(仮想テープ装置)アプライアンス「FalconStor Optimized Backup & Deduplication」(OBD)、の各ソフトの機能を内包する。

 (a)データマイグレーションが容易な仮想ストレージ、(b)CDP、(c)VTL、という三つの機能を兼ねるだけでなく、個々の機能についても高機能化を図った。例えば、既存製品が備えなかった機能として、SANストレージ領域の重複排除が可能になった。これにより、サーバー仮想化環境の仮想サーバーイメージなどの格納容量を大きく削減できるようになる。

 さらに、CDP機能も高めた。既存のFalconStor CDPでは、専用のエージェントソフトを導入した業務サーバーと仮想ストレージの間でデータを複製する使い方に限られていたが、FreeStorでは、仮想ストレージ上のボリュームから別のボリュームに対してデータを複製する使い方ができるようになった。

既存ソフトは続けて併売、それぞれ新版にバージョンアップ

 FreeStorの出荷後も、既存の三つの製品は継続して販売する。これらの製品はいずれも、2015年2月18日付けでバージョンアップしている。新版で強化したポイントの一つは、HA(高可用性)構成である。従来のようなアクティブスタンバイ構成ではなく、アクティブアクティブ構成で利用できるようにした。

 既存の3製品、(a)FalconStor NSS、(b)FalconStor CDP、(c)FalconStor OBD(旧FalconStor VTL)の概要は、以下の通り(関連記事:事業継続と災害復旧の分野に集中してユーザーの需要に答えよう)。

 (a)FalconStor NSSは、業務サーバーからSANストレージ(Fibre ChannelまたはiSCSI)として利用する仮想ストレージソフト。FalconStor NSSに接続した外部のSAN接続ストレージやローカルストレージなどを束ねてストレージプールを形成し、ここからストレージボリュームを切り出して業務サーバーに提供する。ストレージをFalconStor NSSの配下に置くことで、シンプロビジョニング(ボリューム容量の仮想化)やレプリケーションなど各種の機能を一通り利用できるようになる。

 (b)FalconStor CDPは、障害発生時に直前のデータを復旧するCDP(継続的データ保護)を志向した、データバックアップ用途の仮想ストレージソフト。データバックアップ先となるストレージ(iSCSIターゲットソフト)と、バックアップ元となる業務サーバーにインストールする専用のエージェントソフトで構成する。このエージェントがCDP機能を備えており、変更があったデータブロックを、常時ミラーディスク(バックアップ先ストレージ)にコピーする仕組み。障害発生時は元ディスクの代わりにミラーディスクをマウントしてシステムを起動する。

 (c)FalconStor OBD(VTL)は、VTL(仮想テープライブラリー)製品である。VTLとは、実際にはストレージとしてハードディスクを使いながら、バックアップソフトからはあたかもテープ装置であるかのように見える製品のこと。テープ装置と同じやり方でデータバックアップの運用を続けながら、ハードディスクの特徴である高速なアクセス速度や運用負荷の軽減、といったメリットが得られる。FalconStor OBDでは、クラスタリング構成によって処理性能やストレージ領域の拡張が可能。また、重複排除機能も備え、全ノードにまたがってデータの重複を判断し、重複していないデータだけを記録できる。