写真●ソフトバンクの孫正義社長
写真●ソフトバンクの孫正義社長
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 ソフトバンクは2015年2月10日、2014年4~12月期の連結決算(国際会計基準)を発表した。売上高は前年同期比41.0%増の6兆4312億円、営業利益は同16.2%減の7880億円と増収減益だった。

 売上高は米スプリントや米ブライトスター、フィンランド・スーパーセルの業績を計上したことで大幅に増加した。一方、減益となった営業利益は、前年同期はガンホー・オンライン・エンターテイメントやウィルコムの子会社化に伴う一時益計上で上振れしており、この影響を除くと実質的に14%の増益に相当するという。また純利益は、関連会社である中国アリババがニューヨーク証券取引所に上場したことに伴う利益計上によって、前年同期比16%増の5794億円となった。

 同社の孫正義社長(写真)は、国内通信市場の状況について、「設備投資がピークアウトし、安定的にキャッシュフローを生み出せる体制になってきた」と説明。来期以降も着実に増益基調にあるとした。

 4月1日にソフトバンクモバイル、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB、ワイモバイルを経営統合する狙いについては、「無駄なコストを削減して、経営を効率化するため」(孫社長)と説明。現在は4社別々で運用しているネットワークを統合するほか、共通部門も一本化することでコスト削減する。これらの施策によって、さらなる収益確保体制の強化を図る考えを示した。一方、営業面ではワイモバイルブランドは継続し、当面、店舗もこれまで通り展開する。

 NTTドコモが光回線とモバイル回線のセット割を開始する影響については、「三つ巴の激しい競争になるのか、それともある程度の範囲で収まるのか。様子を見てみないと分からない」(同)という見方を示す。

スプリントは「甘い状況ではない」

 安定的に収穫期を迎えつつある国内通信事業に対し、一転して厳しい状況に陥っているのが米国の子会社であるスプリントの状況だ。スプリントの2014年10〜12月期決算(米国会計基準)では21.3億ドル(約2500億円)もの減損損失を計上した。ソフトバンク本体への減損の計上については、「社内でも大分議論したが、ソフトバンクが採用している国際会計基準では減損したくてもできない」(孫社長)という。とはいえ今回のスプリントの減損は「厳粛に受け止めている。スプリントは甘い状況ではない」と孫社長は語る。

 ソフトバンクによる米国進出で最も思惑が外れたのが、T-モバイルUS買収への道が米国当局によって阻まれたことだ。孫社長は「スプリントは(T-モバイルUSと)合併させることで伸ばしていく算段だった。挑戦してみて、改めて山の険しさ、高さを認識しているのが正直なところ。ただ米国は大きな市場で、モバイルの上位2社は大きな利益を上げている。まだ挑戦する余地がある。一歩一歩好転しており、長期的な戦いになる」と続けた。

 なお一部で噂されるスプリントが保有する周波数帯の売却については、「スプリントは2.5GHz帯の周波数帯を世界で一番保有している会社。フリーキャッシュフローがマイナスであるため、今後、10年間で周波数帯が余るのであれば、一部売却することも検討に値する」と否定しなかった。

 スプリントそのものの売却の検討については、「上場会社なので余計なことは言わないほうがよい」(同)とかわした。

[決算資料:2015年3月期 第3四半期 決算説明会(ソフトバンク株式会社)