NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2015年2月9日、海外拠点などの遠隔拠点間の通信を高速化するWAN高速化装置の機能を、クラウドサービスの形で提供開始した。既存のVPN接続サービス「Arcstar Universal One」のオプションとして提供する。WAN高速化装置はNTTコムが用意した世界50カ所の設備に配備できるので、海外拠点を最寄りの設備に接続することによって、拠点間を高速につなげるようになる。

図●Arcstar Universal One アドバンストオプションで提供する代表的なネットワーク機能であるアプリケーション高速化(WAN高速化)の概要(出典:NTTコミュニケーションズ)
図●Arcstar Universal One アドバンストオプションで提供する代表的なネットワーク機能であるアプリケーション高速化(WAN高速化)の概要(出典:NTTコミュニケーションズ)
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 今回NTTコムは、VPN接続サービスのオプションとして、4種類のネットワーク機器を、クラウドサービスの形で用意した。(1)WAN高速化装置の「アプリケーション高速化」()、(2)セキュリティルーターの「セキュアインターネットゲートウェイ」、(3)VPNルーターの「IPSEC VPNゲートウェイ」、(4)アクセスサーバーの「SSL VPN」である。これらを、「Arcstar Universal One アドバンストオプション(仮想アプライアンスタイプ)」の名称で提供する。

 ネットワーク機器をクラウドサービスの形で提供するに当たり、NTTコムが2013年に買収した米Virtela Technology Servicesが提供していた仮想アプライアンス型のネットワーク機器群を利用した。いわゆるNFV(Network Functions Virtualization)であり、WAN高速化装置やルーターといったネットワーク機器の機能を、汎用のPCサーバーとサーバー仮想化ソフトの環境で動作する仮想アプライアンスの形で実装している。海外では2014年7月から提供してきたサービスであり、今回国内でも提供を開始した形である。

WAN高速化装置の利用料をクラウド化で50%削減

 ネットワーク機器を仮想アプライアンス型のNFVとして用意することのメリットは、専用のハードウエア機器やベアメタル(物理)サーバーと比べてプロビジョニング(配備)が容易なことである。NTTコムは、この利点を活かしてネットワーク機器のクラウドサービス化を図った。

 クラウドサービスであるためユーザー企業からはネットワーク機器の実装形態は分からないが、ハードウエア装置を利用したクラウドサービスと比べると、納期が数カ月から数分単位に短縮できるほか、利用料金を低く抑えられるといったメリットがある。

 利用料金は、利用する機能やネットワーク帯域などに応じて異なる。代表的なネットワーク機器機能であるアプリケーション高速化(WAN高速化)の場合、本社と国内データセンターを10Mビット/秒で接続し、本社と海外拠点5カ所を2Mビット/秒で接続したモデルケースの場合、初期費用が60万円(10万円×6拠点)、月額費用が6拠点合計で232万8000円(19万4000円×12カ月)。

 これに対して、クラウドサービスを利用せずにWAN高速化装置を購入する場合の試算額は、データセンター接続用の中規模WAN高速化装置×1台と、海外拠点接続用の小規模WAN高速化装置×5台で、初期費用(機器代と設定費)が500万円、維持費用(保守費)などが年間100万円で、合計で600万円になる。つまり、このケースにおいては、クラウドサービスを利用することで、約600万円が約300万円へと50%費用を削減できる。