写真●欧州SAPでエグゼクティブ・ボード・メンバーを務めるロバート・エンスリン氏
写真●欧州SAPでエグゼクティブ・ボード・メンバーを務めるロバート・エンスリン氏
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 SAPジャパンは2015年2月6日、同社にとって23年振りの新製品となるビジネスアプリケーション群「SAP Business Suite 4 SAP HANA (S/4HANA)」を日本国内向けに発表した。2015年の第1四半期(1~3月)中に、パブリッククラウド形式での提供から始める。「日本市場向けにも遅れなく、世界と同時にサービスを開始する」とSAPジャパンの福田譲社長は説明。クラウド形式の後に、オンプレミス型でも販売すると明らかにした。福田社長は「年内には国内で3ケタのユーザーが、S/4HANAを利用すると見込んでいる」と話す。

 S/4HANAは、同社の主力であるビジネスアプリケーション群「SAP Business Suite」や、ERPパッケージ「SAP ERP」「SAP R/3」の後継となる新製品だ。同社は2月4日に米国で概要を発表した。(関連記事:欧州SAPがERPを23年ぶりに刷新、動作DBを同社の「HANA」のみに)。

 「S/4HANAのSはシンプルのS、4は第4世代の意味。既に当社製品を利用している企業もぜひ、S/4HANAに移行してほしい」と欧州SAPのエグゼクティブ・ボード・メンバーでグローバル・カスタマー・オペレーションズ・プレジデントを務めるロバート・エンスリン氏(写真)は強調した。既にSAP Business Suiteを同社のインメモリーデータベース「HANA」で利用している顧客企業は、「S/4HANAのライセンス費用が原則含まれている」(エンスリン氏)という。クラウド形式で提供する場合の価格は、提供時に公表される。

 SAPジャパンの福田社長は、S/4HANAについて「これまでのERPの三つの限界を打破する製品」と説明。三つの限界として、(1)OLTP(オンライントランザクション処理)とOLAP(オンライン分析処理)が分離している、(2)デスクトップPCにアクセスしなければ情報を得られない、(3)基幹系システムのカバー範囲が狭い、を挙げた。

 (1)については、S/4HANAは動作基盤としてHANAを採用したことで、「OLTPとOLAPを融合できる」(福田社長)。これまではERPなどの基幹系システムのOLTPと、データ分析用のOLAPの処理は別々にシステムを構築していたが、「HANAに最適化したことで両者を融合できる」としている。(2)についてS/4HANAは、タブレットやスマートフォンからの利用画面を標準で実装する。(3)は「カバー範囲を広げるために、他社との連携などを想定した業務プロセスをS/4HANAで提供する」(同)という。

 SAPのビジネスアプリケーションはこれまで、動作DBとして他社製のリレーショナルデータベースを選択できたが、S/4HANAはSAPのHANAのみとなる。この点について福田社長は、「SAP Business Suiteの新規利用者のうち、既に82%の顧客が動作基盤にHANAを選んでおり、HANAの技術者も増えている。動作DBがHANAに限られていることは問題ない」との見方を示した。