写真1●KDDIの田中孝司社長
写真1●KDDIの田中孝司社長
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 「我々はauスマートバリューを強い思いで開始した。(NTTドコモのセット割は)我々にはそうやすやすと追いつけないだろう」――。

 KDDIの田中孝司社長(写真1)は2015年1月30日に開催した決算会見の席で、前日に詳細を発表したNTTドコモのモバイルと光回線のセット割「ドコモ光パック」(関連記事:ドコモ光は単独型と一体型の2種類、料金は複雑で分かりにくく)に対し、このように勝利宣言した。また「当面、業績には大きな影響は出てこない」(同)という見方も示した。

スマバリは「シンプルで一人ひとりお得」、ドコモとは違う

 田中社長は、「スマートバリューは(モバイル回線当たり月額1410円割り引くという)シンプルで一人ひとりがお得に感じるプラン。(家族単位を基本に割り引きする)NTTドコモのセット割とは、いみじくも違いが鮮明になった」と説明する。

 田中社長は「スマートバリューを検討していた2011年ころ、半年から1年かけて、どのような割引スキームにするのかかなり悩んだ」と振り返る。固定側の回線を割り引くのか、モバイル側の回線を割り引くのかだ。同社では多くの調査を実施し、最終的にモバイル側の回線を割り引いたほうがユーザーはお得感があるという結論を見い出したという。

 当時、世界的に見てシェアが2位の事業者が固定とモバイルのバンドルプランで成功した例は無かったという。しかしスマートバリューではモバイル側を割り引くことで、連鎖的に家庭内のシェアを向上する仕組みを取り入れた。これが見事に当たり、スマートバリューはここ数年のKDDIの勢いをもたらす原動力となった。

 このような「強い思い」で開始したスマートバリューに対し、ドコモのセット割はそこまでの思いが見られないと田中社長は感じたようだ。田中社長は、「スマートバリューはシンプルでいまだ競争力がある。今後もスマートバリュー中心で優位に戦える」と自信を見せた。

当初は固定中心の「転用」合戦で「業績への影響は少ない」

 ドコモのセット割が開始されたとしても、当面のKDDIの業績に大きな影響が出ない理由として、田中社長は「(NTT東西のサービス卸に対する)運用ルールが完全に整備されておらず、当面、市場が混乱するため」と語る。

 具体的には、サービス卸に関するガイドライン案がパブリックコメント中でまだ固まっておらず、電話回線や映像を含めた運用ルールが明確になっていない点などを挙げた。「転用」後に、番号ポータビリティーによって番号を引き継げない問題なども残っている(関連記事:サービス卸の開始で“転用合戦”が必至、総務省が異例の厳戒態勢 )。

 またサービス卸を使った競争の初期段階は、NTT東西が既に契約している既存のフレッツ光ユーザーを、サービス卸を活用するプレーヤーが奪い合うという固定市場中心の競争が起こると予測する。この場合、KDDIについては固定もモバイルも大きな影響を受けない。

 いわゆるセット割を使ったモバイルと固定のバンドルプランについては、「モバイル側が影響を受ける可能性がある」(田中社長)が、こちらの競争は少し遅れて始まるという見方であり、「スマートバリューが競争力があるため、まだまだ優位に戦える」(同)と続ける。

3Q業績は2桁成長へ向けて順調に進捗

写真2●通期目標に向け業績は順調に進捗
写真2●通期目標に向け業績は順調に進捗
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 同社の2014年度第3四半期の連結決算は、売上高は2014年4〜12月の累計で前年同期比5.4%増の3兆3519億円、営業利益は同9.7%増の5850億円の増収増益となった。売上高の通期目標4兆6000億円に対する進捗率は73%、営業利益の通期目標7300億円に対する進捗率は80%である(写真2)。田中社長は「2期連続の営業利益2桁成長に向けて順調な進捗」とした。

 実際、内部目標からすると「若干上振れ」(田中社長)となる進捗率だ。ただし第4四半期は最大の商戦期であり、顧客獲得費用が膨らむ恐れがあることから、業績予想は据え置いた。「期初にはNTT東西がサービス卸を開始することは想定しなかった。これから様々なことが起こるかもしれないが、目標を達成できるようにしていく」(田中社長)とした。

[決算資料:2015年3月期第3四半期決算説明会資料]