写真1●富士通研究所が発表した指輪型ウエアラブル端末
写真1●富士通研究所が発表した指輪型ウエアラブル端末
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 富士通研究所は2015年1月13日、指先に装着して空中で文字入力などができる指輪型のウエアラブル端末を開発したと発表した(写真1)。キーボードやマウス、手書きのペンといった端末を操作することなく、ハンズフリーで数字や漢字などを入力できる。設備の保守点検などの用途で実証実験を進め、2015年度中の実用化を目指す。

 同端末では、内蔵する加速度・角速度センサー、磁気センサーが指の動きを検出する。取得したデータはBLE(Bluetooth Low Energy)でスマートフォンに送信、アプリケーションが解析して文字としてPC画面などに出力する。

 文字入力は、指輪型端末に搭載する「入力操作ボタン」を押すことで開始する。アプリ側の専用の認識エンジンが、文字入力のために装着者が意識的に動かす運動成分だけを抽出して解析。文字として出力する。「激しい運動でなければ、体自体を動かしながらでも文字入力できる」(富士通研究所ヒューマンセントリックコンピューティング研究所ヒューマンインタラクション研究部の村瀬有一主管研究員、写真2)。

写真2●富士通研究所ヒューマンセントリックコンピューティング研究所ヒューマンインタラクション研究部の村瀬有一主管研究員
写真2●富士通研究所ヒューマンセントリックコンピューティング研究所ヒューマンインタラクション研究部の村瀬有一主管研究員
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 NFC(近距離無線通信)タグリーダも搭載しており、あらかじめ設備に備え付けておいたタグを読み込むことで、作業に必要な情報を取得できる。充電可能なバッテリー内蔵式で、8時間連続で駆動し、3000回の文字認識が可能という。

 村瀬主管研究員は「設備の保守点検などのシーンで、メモや記録などのために作業を止めたくない、といった現場の声に応える」と話す。ヘッドマウントディスプレー(HMD)などのウエアラブル端末と組み合わせ、完全に“ハンズフリー”で作業できる世界を描く。

 同社は2014年2月に、空中でジェスチャーを認識するグローブ型のウエアラブル端末について技術発表している。「グローブ型や時計型、指輪型などのウエアラブル端末を作業現場の利用シーンに応じて開発、提供していきたい」(村瀬主管研究員)。端末を単体で販売するのではなく、HMDやデータを収集したり蓄積したりするためのクラウドと組み合わせた形でサービスとしての事業化を目指す。