日経Linuxと日経ソフトウエアは2014年12月24日、「みんなのラズパイコンテスト」の受賞作品を発表した。Raspberry Piを活用したアイデアや制作物を2014年10月1日~11月17日に募ったところ、158件もの応募があった。驚くような力作が並ぶなか、賞金10万円のグランプリのほか44件の受賞作品が選ばれた。

水槽間を動く高機能自動給餌器

 グランプリに選ばれたのは水野修氏の「複数の熱帯魚水槽の間を移動して照明点灯や自動餌やり、写真撮影をするロボット『あくあたん参号機』」(表1写真1)。勤め先の大学の研究室にある、4つの水槽・水鉢を巡回して自動給餌などができるロボットだ。特に問題がなければ1週間以上放置でき、管理が非常に楽になっているという。

写真1●グランプリを受賞した自動水槽管理ロボット「あくあたん参号機」
写真1●グランプリを受賞した自動水槽管理ロボット「あくあたん参号機」
3つの水槽、1つ水鉢の間をレール上で移動して巡回する。
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表1●グランプリなど主要な受賞作品
*1はアイデアによる応募。
表1●グランプリなど主要な受賞作品
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 車輪の付いたロボットにRaspberry Piを搭載し、パン・チルトができるカメラで撮った映像をWebブラウザーから見られるようにしている。その上に付いている給餌装置はモーターの制御で餌を自動投入する(写真2)。動作の結果などを写真とともにツイートして、そのリプライで遠隔制御もできる。

写真2●あくあたん参号機の給餌機構部
写真2●あくあたん参号機の給餌機構部
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 水槽には別途、温度・気圧センサーや冷却ファンを付けていて、Arduinoで情報を収集し、Raspberry PiにBluetoothで転送。それを基にRaspberry Piは冷却ファンを回したりエアコンをつけたりする。エアコンと照明は、それぞれの壁スイッチにサーボを取り付けて物理的にオンオフする。そのサーボの制御にもう1台のRaspberry Piを使い、あくあたん参号機本体のRaspberry Piと連携して動作する。

 実際に給餌する動画を見ると、作り込まれた作品全体の様子がよく分かる(受賞者による投稿動画1)。ちなみにロボット製作と本業の研究内容とは全く関係がないという。

技術賞の自動洗車機と施錠機

 グランプリに続く賞として、技術とアイデアをそれぞれ評価した技術賞とアイデア賞、大学院生以下の学生を対象にした学生賞を表彰した。

 技術賞に選ばれたのは、TPRobot's夢工房の「車の表面を走行してモップ掛けする『くるる』と落ちなかった汚れを回転式モップで取るマルチコプター『ぐるる』」と、石原和典氏の「スマホ、インターホン、おサイフケータイでリモートから施錠・解錠できる電気錠」。どちらもすごく凝った作りになっている。

 くるるとぐるるは共同で働く洗車ロボットだ(図1)。マグネット付きのくるるは、車の表面をはってモップ掛けしてくれる(受賞者による投稿動画2)。汚れセンサーを持っていて取れない汚れがあると、ぐるるを呼び出す(XBee経由)。

図1●洗車ロボットの「くるる」と「ぐるる」
図1●洗車ロボットの「くるる」と「ぐるる」
くるるはArduino、ぐるるはRaspberry Piで動く。
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 マルチコプターのぐるるはRaspberry Piのカメラモジュールで、車、くるる、汚れの順に認識して近付いていく。そしてモップの角度を合わせて回転させて汚れを取る仕組みだ(写真3受賞者による投稿動画3)。

写真3●くるるに呼ばれて車まで飛んできたぐるる
写真3●くるるに呼ばれて車まで飛んできたぐるる
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 石原氏の電気錠は、Raspberry Piでモーターを回し、自宅の鍵のサムターンを回して施錠・解錠ができる装置(図2)。ブラウザーから施錠・解錠できるほか、ドアの外に取り付けたFeliCaリーダーにおサイフケータイを近付けて解錠できる。インターホンは電気錠を制御できる機種にわざわざ取り替え、それが出す信号を解析。単純なパルスだったので、Raspberry Piで読み取って施錠・解錠するようにした(受賞者による投稿動画4)。

図2●スマホやインターホンから制御できる電気錠
図2●スマホやインターホンから制御できる電気錠
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