KDDIは2014年12月18日、NTT東西による光回線の「サービス卸」に対し、約款の作成と公表などを求める意見書を総務大臣宛てに提出した。サービス卸を巡っては、提供条件の適正性や公平性、透明性の確保が課題となっており、具体策の検討は総務省に委ねられている。だが、同日の情報通信審議会の答申を経ても、具体策は明らかになっていない。業を煮やしたKDDIは、総務大臣に直接、回答を求めた格好だ。

 KDDIが意見書で要望したのは、(1)約款の作成と公表の義務化、(2)NTTグループの法令違反を監視する仕組みの構築、ならびにガイドラインの作成、(3)消費者の混乱を回避するルール作り、(4)上記にまつわる行政手続きの確実な実施、などである。

 (1)と(2)では従来の主張と同様、公平性や透明性を十分に担保するため、相対取引を禁じ、約款を作成して公表すべきとした。さらにNTT東西とNTTドコモは支配的事業者であるため、サービス卸における禁止行為事項をガイドラインとして明確化。グループ内の取り引きに関する報告を定期的に求めるなど、監視体制の強化が必要と主張した。

 (3)は、電話番号の取り扱いなどで消費者の混乱を招く恐れがあり、事業者間の運用ルールを作るべきというもの。実は、サービス卸には、固定電話の番号ポータビリティー問題が指摘されている。例えばフレッツ光からA社のサービス卸に乗り換え、さらにB社のサービス卸に乗り換えた場合、使用中の電話番号を引き継げない。

 NTT東西は、フレッツ光からサービス卸への乗り換えに対し、既存の契約IDと電話番号を引き継げる「転用」と呼ぶ仕組みを用意している。ただ、いったんサービス卸に乗り換えるとNTT東西の直接の顧客ではなくなる。上記の例で言えば、A社からB社への乗り換えに「転用」は適用されず、常に解約・新規の扱いとなるため、使用中の電話番号を引き継げなくなるというわけだ。もっとも、総務省はこの問題を認識しており、既に協議を始めている。

 (4)は(1)~(3)にまつわる適切な行政手続きを求めたものだが、興味深いのは、サービス卸がNTT東西の「活用業務」に該当すると指摘した点だ。仮に活用業務と見なされた場合、NTT東西はサービス開始の30日前までに総務省に改めて届け出が必要となり、適正性や公平性など7項目にわたって審査を受けることになる。

 KDDIは今回、電気通信事業法の第172条にある「意見の申出」を活用した。第172条では、通信サービスの料金や提供条件、通信事業者の業務の方法などに関する苦情や意見があれば、理由を明記した文書とともに総務大臣に申請できると定めている。“一方通行”の要望書と異なり、「総務大臣は誠実に処理して回答する」ことが決められており、具体策を確実に引き出したい考えだ。