日本IBMは2014年12月4日、同社の人工知能「Watson」が考案した料理のレシピを実際に作って披露するというイベントを開催した。Watsonは自然言語で書かれた文章を学習し、その内容を元に質問に応答できるという「質問応答システム」である。Watsonは既存の9000種のレシピを学習することで、人間のシェフのリクエストに応答してレシピを考案できるようになったという。

写真1●「レフェルヴェソンス」の生江史伸エグゼクティブ・シェフ
写真1●「レフェルヴェソンス」の生江史伸エグゼクティブ・シェフ
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 Watsonが考案したレシピは、「ミシュランガイド東京2015」で二つ星を獲得した東京・西麻布のフランス料理店「レフェルヴェソンス」の生江史伸エグゼクティブ・シェフが実際に調理した(写真1)。Watsonは米国の人気料理雑誌「ボナペティ」が掲載した9000種類のレシピを学習しており、生江シェフが三つのキーワードをWatsonに与えると、その内容に応じたオリジナルレシピを考案したのだという。

 Watsonが考案したレシピは、材料のリストのほかに、多いもので30ステップにも及ぶ調理の手順書、料理の仕上がりのイメージ写真などで構成されており、実際にレシピに基づいた調理が可能なのだという。Watson考案のレシピに基づく料理がどのようなものか、記者が実際に試食をする機会を得たので、料理の写真と併せて解説しよう。

アペリティフ:「みかん」×「パンチ」×「休日」

写真2●アペリティフ:「みかん」×「パンチ」×「休日」
写真2●アペリティフ:「みかん」×「パンチ」×「休日」
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 最初のメニューであるアペリティフ(食前酒、写真2)は、「これからおいしくなる『みかん』と、お客様にくつろいだ気分を味わっていただきたいという思いを込めた『パンチ』『休日』という三つのキーワードから提案されたレシピ」(生江シェフ)だという。Watsonが100種類近く提案したレシピの中から、生江シェフがレシピを選んだ。

前菜:「蟹」×「スープ」×「フランス風」

写真3●前菜:「蟹」×「スープ」×「フランス風」
写真3●前菜:「蟹」×「スープ」×「フランス風」
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 前菜は蟹のほぐし身を使った濃厚なスープ(写真3)。「冬の寒さで凍えた体を温めるという意味で、冬の食材である『蟹』と温かい『スープ』のキーワードを選んだ」(生江シェフ)。もう一つのキーワードが「フランス風」なのは、今回のテーマがフランス料理であるため。スープにトリュフを散らしてあるのが、Watsonの考える「フランス風」なのだろうか。

蕪の料理:「蕪」×「ソテー」×「フランス風」

写真4●蕪の料理:「蕪」×「ソテー」×「フランス風」
写真4●蕪の料理:「蕪」×「ソテー」×「フランス風」
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 レフェルヴェソンスの得意メニューといえば、蕪(カブ)を使ったものなのだという。「Watsonが蕪を使ってどういう提案をしてくれるのか興味があった」という生江シェフの遊び心から生まれたのが「蕪」と「ソテー」をキーワードにしたこのメニューだ(写真4)。4時間ローストした蕪には、刻んだマッシュルームが添えられている。蕪の横にはソテーしたレタス。レタスにはレタスをすり潰したソースが添えてある。

 付け合わせはキドニービーンズ(赤インゲン豆)と、スペインの唐辛子であるピマンデスペレット。生江シェフは、「このような付け合わせを選ぶWatsonの提案は、我々に無い新しい発想だった」と語る。