米Appleの「iPod」を巡る独占禁止法訴訟の審問で、原告側弁護士は「AppleはiPodユーザーが他社サービスから購入した音楽を黙って削除していた」と主張したと、米Wall Street Journalが報じた。

 米カリフォルニア州オークランドの連邦地方裁判所で現地時間2014年12月3日に行われた審問において同弁護士が陪審団に述べた内容では、2007年~2009年に、Appleの「iTunes Store」以外のサービスから音楽を入手したユーザーがiPodと「iTunes」音楽ライブラリーを同期させようとすると、エラーメッセージが表示され、工場出荷時設定に戻すよう指示された。ユーザーが指示に従って初期設定に戻すと、他社サービスからの音楽が消去された。同弁護士は、Appleがこの問題をユーザーに知らせていなかったと非難している。

 この集団訴訟は2005年1月に提起されたもので、2014年12月2日に審理が始まった(関連記事:iPodの反トラスト訴訟、故Jobs氏のメールとビデオを証拠として提出へ)。原告側は、Appleがソフトウエアアップデートにより、他社のコンテンツがiPodに対応できないようにすることで、競合社を遮断し、自社の独占的地位を維持したと主張している。

 Appleは、これらの行動は正当なセキュリティ対策だったと反論。Augustin Farrugiaセキュリティ担当ディレクターは、より詳しい説明をユーザーにしなかったのは「ユーザーに過度な情報を与える必要はなく、ユーザーを混乱させたくなかったため」と釈明した。

 また、当時ハッキングの脅威に悩まされ、iTunesの保護に「偏執的になっていた」と述べ、他社サービスからの音楽ファイルを削除するアップデートはユーザーをハッキングから守ることが目的だったと主張した。

 米The Vergeは、12月4日に出廷したEddy Cueインターネットソフトウエアおよびサービス部門担当執行バイスプレジデントの証言を報じている。同氏は、独自のデジタル著作権管理(DRM)技術「FairPlay」の開発はレコード会社との契約に沿って音楽ファイルをライセンス保護するため、iTunesアップデートはシステムのセキュリティを向上するためだと説明した。

 また、「我々は当初よりFairPlayをライセンス供与することを考えていた。それが市場のより速い拡大と成長のためになり、正しいと思う行動の1つだった」とも発言した。しかし、多数のMP3プレーヤーが市場に登場し、相互運用性などの問題から、「それを実行する方法が見つからなかった」としている。

 さらにCue氏は、レコード会社とのセキュリティに関する契約では、もしAppleのシステムがハッキングを受けた場合、一定期間内に解決できなければ、レコード会社はすべての音楽をiTunes Storeから引き上げることになっていたと明かした。

 この訴訟で原告側はAppleに3億5000万ドルの損害賠償を支払うよう求めている。裁判ではApple共同設立者で2011年に死去した故Steve Jobs氏の電子メールとビデオが証拠提出される。Jobs氏は、「ハッカーたちは新しい回避策を見つけるので、保護のために頻繁なiTunesアップデートは必要だ」と述べていたという。