写真●西日本高速道路、保全サービス事業本部、保全サービス事業部、施設保全課の枝廣篤氏
写真●西日本高速道路、保全サービス事業本部、保全サービス事業部、施設保全課の枝廣篤氏
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 「交通管制システムが止まったら高速道路が使えなくなる。4カ所にある管制センターのいずれかが止まっても広域でバックアップできるようにSDNを導入した」。西日本高速道路(NEXCO西日本)は、4カ所に分散して独立していた交通管制システムをSDNで統合し、災害時に互いにバックアップできる体制を整えた。NEXCO西日本の枝廣篤氏(写真)は2014年11月21日、NECとNECのユーザー会が開催したイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO 2014」で講演し、SDNを採用した狙いを説明した。

 NEXCO西日本は2014年春、高速道路を安全に利用するための方策の一つとして、道路管制センターや高速道路事務所など全45拠点をメッシュ型に接続した全長約4000キロメートルの広域ネットワークを、SDNを使って構築した。主な狙いは、交通管制システムのDR(ディザスターリカバリー、災害時復旧)である。西日本エリアに4カ所ある支社(関西、四国、中国、九州)ごとに独立していた交通管制システムを統合し、互いにバックアップできるようにした。

道路状況を利用者に提示できなかったら道路を走れない

 交通管制システムとは、道路状況を把握している道路管制センターのバックヤードで動いてるシステムである。大きく二つの機能、つまり、高速道路の状況を収集して現状を把握するための設備/機能と、高速道路の利用者に状況を知らせる設備/機能で構成する。情報収集時には、例えば、自動車の速度を計測し、渋滞などを判定する。利用者に状況を知らせる際には、状況を分かりやすく翻訳し、「どこのインターチェンジからどこのインターチェンジまで渋滞している」といった情報を提示する。

 交通管制システムの可用性を高める施策としては従来、サーバー機などの装置の二重化を図ってきた。しかし、道路管制センターそのものが被災して機能を停止してしまった場合は、管轄地域の高速道路を監視/抑制が困難になってしまう。道路の一部が壊れているといった情報を高速道路の利用者に提供できなくなるからである。「管制センターが止まると、道路を走れなくなる」(枝廣氏)。

 災害時にも停止しない道路管制センターを作ることが、高速道路の保全のためには重要だった。道路管制センターは、4カ所の支社ごとに独立している。そこでNEXCO西日本では、4カ所の道路管制センターそれぞれが、それぞれをバックアップできるように、新しい交通管制システムを構築した。