写真●JR東日本、鉄道事業本部、電気ネットワーク部、鉄道ICTソリューションプロジェクトの殖栗英介氏
写真●JR東日本、鉄道事業本部、電気ネットワーク部、鉄道ICTソリューションプロジェクトの殖栗英介氏
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 「SDNなら、個々のサービスごとに個別のネットワークを構築する必要がないので、新しいサービスを迅速に提供できる」---。東日本旅客鉄道(JR東日本)は2014年3月から順次、東京駅と新宿駅にSDNを活用したネットワーク基盤を構築した。JR東日本の殖栗英介氏(写真)は2014年11月20日、NECとNECのユーザー会が開催したイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO 2014」で講演し、同社がSDNを採用した狙いを説明した。

 JR東日本は、東京駅と新宿駅の二つの駅において、駅構内ネットワーク基盤「駅構内共通ネットワーク」を新規に整備した。東京駅は、2013年4月の京葉エリアを皮切りに提供エリアを順次拡大し、予定していた全4エリアで2014年3月に使用を開始した。一方の新宿駅は、2014年10月に使用を開始した。SDNの採用によって、電話や映像などの用途が異なるネットワークを一つの物理ネットワークに集約したほか、ロッカーの空き状況の提供システムや無線LANといった新規サービスの提供基盤としても活用している。

 SDNを採用したことのメリットとして殖栗氏は、新規サービスを迅速に提供できるようになったことを指摘する。例えば、東京駅における無線LANアクセスポイントを利用した屋内位置検知システムの場合、2013年12月から2014年3月までの4カ月で設計、構築、工事、試験を完了してサービスを開始できた。SDNを使わなかった場合と比べると7カ月の工期短縮につながったという。この他のメリットとしては、複数のネットワークを物理的に一つに統合したことで運用コストが減ったとしている。

サービス向上には三つの課題があった

 同社がSDNによる駅構内共通ネットワークを構築した主な狙いは、駅の利用者へのサービス向上である。現在でも、自動改札やキオスクなどの様々なシステムがあるが、これに新サービスを追加する。例えば、無線LAN環境の整備(公衆無線LANや駅社員へのタブレット端末の配布)、訪日外国人への対応(翻訳ツールなど)、コインロッカーの空き状況を情報提供、カメラ映像により混雑状況を把握して駅員を配備、などを検討している。