訪日外国人を対象にした「おもてなしアプリ」のプロジェクトが始動、システム動作の確認を含めた実証が2014年10月から始まっている。任意団体の「おもてなしアプリ推進協議会」が、経済産業省のトラストフレームワーク実証事業を担うJIPDEC(一般財団法人の日本情報経済社会推進協会)と連携して推進している。

 このプロジェクトでは、ICTを活用して、日本を「災害が多くて危険な国」から「災害は起きるけど安心な国」へとイメージを変えて、外国人旅行者を全国に導き、地方創生を含めた新しいビジネスを喚起していくことを目指す。おもてなしアプリでは、外国人旅行者に安心、便利、快適に日本を旅してもらうのに役立つ様々なアプリへのゲートウエイを提供する計画だ。

 各種アプリをベースにした外国人旅行者を対象にした様々なビジネスを立ち上げて、その利益の一部を原資に安心・安全に必要な機能を自立的に、継続的に提供できるようにしようというのが基本的な構想である。

ICTを活用して、災害は起きるけど安心な国にイメージを変革

 「災害は起きるけど安心な国」へとイメージを変えるため、例えば多言語に対応した災害情報の提供を計画する。まずは震災時の配信システムの構築から準備を進めている。海外からの旅行者が大規模災害の発生時に情報から孤立しないように、報道(ニュース)を外国語に翻訳、提供する支援ネットワークの整備なども計画する。

 想定では、まず外国人旅行者に対して、アンケートに回答してもらい、集まるデータを本人の許諾の下で利用し旅行者をもてなしていく。アンケート項目は、使用言語や居住都市、性別、年齢、旅行目的などである。外国人旅行者に対しては、このアプリをダウンロードしてアンケートに回答することで、例えば国内で無線LANサービスを無料で利用できるといった特典を用意する。政府は2020年に訪日外国人2000万人を目指しているが、400万ダウンロードを想定しプロジェクトを推進していく。

 この年400万人が登録するパーソナルデータと、端末からの位置情報を活用して、外国人旅行者に安心、便利、快適に日本を旅してもらうのに役立つ様々なアプリを提供する。例えば、アンケートで使用言語がわかるので、その言語にあわせたアプリを紹介できる。年齢や性別、来日目的、あるいは位置情報をベースにした訪日外国人向けの新しいビジネスが立ち上がることも期待できる。その際に、測位情報を利用するので、トラストフレームワークの構築を目指す。

 プロジェクトでは、地方や中小の事業者が容易に参加できるプラットフォームの構築を目指す。観光業や小売業が多数参画して、全国各地の経済が元気になるような仕組みとする。合わせてベンチャーのサービス提供を応援したい考えである。

 こうした仕組みの上で立ち上がった事業の収益から、例えば無線LANサービス提供事業者のコスト負担や、安心・安全な仕組みづくりに必要なコストを捻出する。こうしたサイクルをまわして、利用の拡大やサービスの拡充を進めていく。既に、おもてなしアプリ推進協議会では、数十件の個別プロジェクトが走り出しているという。