画面●ULFT8のオプションであるHULFT Scriptのジョブ設計画面
画面●ULFT8のオプションであるHULFT Scriptのジョブ設計画面
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 セゾン情報システムズは、基幹システムのデータ連携に向いた企業向けファイル転送ソフトの新版「HULFT8」を、2014年12月8日に発売する。前版のHULFT7を発売した2008年10月から6年振りのメジャーバージョンアップとなる。新版では、データ圧縮方法の拡充などによってデータ転送速度を向上させたほか、、ファイル転送前後の処理をGUIで実装するHULFT Scriptを新しく搭載した(画面)。

 HULFTは、基幹システムを構成する異機種同士をデータを介して連携させる用途に適した、TCP/IP上で動作するファイル転送ソフトである。特徴は、パソコンからUNIXサーバー機、メインフレームまで稼働環境が豊富であることと、異機種間でデータをやり取りするために文字コードの変換機能やデータ形式の変換機能を備えること。EBCDICやIBM漢字などの独自の文字コードも扱える。

 新版のHULFT8で強化したポイントの一つは、データ転送性能を高めたことである。同社が実施したファイル転送速度の測定実験では、AWS東京リージョンからセゾン情報システムズに対して500Mバイトのファイルを配信するのに16秒を要した。HULFT7(86秒)と比べると約5.3倍高速で、FTP(95秒)との比較では約6倍高速である。

圧縮方法と転送サイズの拡大でデータ転送を高速化

 データ転送性能が向上した理由は大きく二つある。一つはデータ圧縮アルゴリズムの追加である。従来、HULFTは、メインフレームのデータに適した圧縮方法しか選択できなかった。レコード内部のデータをレコード単位で圧縮する「横圧縮」と、複数レコードにまたがって圧縮する「縦横圧縮」である。これに対してHULFT8では、一般的なファイルデータの圧縮に適した汎用の圧縮アルゴリズムとして、Deflate(デフレート)を選択できるようにした。いずれの圧縮方法を選んでも、従来版と同様に自動的にオンメモリーでリアルタイムに圧縮して転送できる。

 データ転送性能が向上したもう一つの理由は、長距離・大容量ファイルの転送高速化を目的に、ネットワーク転送設定値を改善したことである。そもそもHULFTプロトコルでは、データを読み取って加工した後に、ある一定のサイズで逐次TCP/IPネットワークにパケットデータとして送出する。従来のHULFTではパケットのサイズを約1万バイトで送出していた。これを最大で6万5520バイトと大きくした。さらに、通信経路上のMTUに応じたパケット分割において端数が出ないように、送出サイズを「MSS×2の倍数で、65520以下の最大値」とした。

ジョブスクリプトを記述/実行可能に

 新版のHULFT8で強化したもう一つのポイントは、ファイル転送の前後で発生するバッチ処理をノンプログラミングで開発できるようにするHULFT Scriptをオプションで用意したことである。ファイル送信前のファイルバックアップや、送信完了通知、ファイルトリガーによる送信などを、GUIで簡単に作成できるという。これにより、別途バッチファイルやシェルスクリプトなどを記述する必要がなくなる。あらかじめ11種類のテンプレートを用意しており、これを使えば簡単な処理であれば5分で構築できるとしている。

 新版では、この他にも各種の強化を施した。例えば、これまで別製品だった英語版を日本語と統合し、一つの製品で日本語と英語を切り替えて使えるようにした。また、評価版によるテストを経て製品版に移行する際に、プロダクトキーの更新だけで製品版に切り替わるようにした。従来は、Windows版やUNIX/Linux版において、製品版への移行に際してモジュールの切り替えが必要となっており、評価環境での検証を本番環境でも繰り返す必要があった。