写真1◎代表取締役/プリンシパル・アナリストの内山悟志氏
写真1◎代表取締役/プリンシパル・アナリストの内山悟志氏
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真2◎シニアアナリストの舘野真人氏
真2◎シニアアナリストの舘野真人氏
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 アイ・ティ・アール(ITR)は2014年12月3日、国内企業におけるIT投資動向を調べた「IT投資動向調査2015」の結果を発表した。2014年度のIT予算は前年度に比べ増加傾向にあるものの、伸びは鈍化。2015年度も低成長の傾向が続く見込みだ。代表取締役/プリンシパル・アナリストの内山悟志氏(写真1)は「経営者がITの重要性を低く見ていることが根本原因」と話す。

 IT投資動向調査2015は2014年10月に調査、有効回答数は1095件(1社1人)。2001年から毎年実施しており、今回が14回目となる。

 今回の調査で、2014年度にIT予算を増額したと答えたのは23.1%(「20%以上増加」が5.5%、「20%未満増加」が17.6%)。リーマン・ショック以降、久々に増加傾向に転じた(関連記事:「投資意欲はリーマンショック前の水準に回復」、ITRがIT投資動向調査を発表)2013年度の31.6%(同6.9%、24.7%)に比べ、8ポイント以上減った。2015年度もこの状況は続く見込みで、IT予算を増額すると回答したのは21.6%(同3.9%、17.7%)だった。

 顕著なのは、IT予算を「20%以上増加」する割合が大きく減少していることだ。2015年度が予想通り3.9%となった場合、ITRが調査を開始した2001年度以来、最も低い数字となる。

 一方で、2014年度にIT予算を減額した企業は11.5%(「20%以上減少」が2.5%、「20%未満減少」が9.0%)、2015年度予想でも12.8%(同3.1%、9.7%)にとどまる。2014年度、2015年度とも、IT投資は全体として微増傾向にあると言える。

 業種別に見ると、2015年度に前年度よりもIT投資を増やす傾向にあるのは「建設」のみ。「情報通信」がほぼ横ばい、それ以外の「製造」「流通・小売・商社」などの業種では、前年度よりもIT投資は減る傾向にある。特に減少傾向が強い業種は「サービス」。調査を担当した舘野真人シニアアナリスト(写真2)は「サービス業は内需への依存率が高く、消費増税などが影響しているのではないか」と話す。

 回答企業にビジネスの状況を尋ねたところ、65%が「好調」と答えた。にもかかわらず、IT投資の伸びが鈍化している状況に関して、内山氏は経営者の意識を問題視する。「IT部門や企業ITの重要性を低く見ている。調査開始時点からこの状況は変わっていない」(内山氏)。

 IT部門にも大きな問題がある。今回の調査で年間IT支出のうち、IT部門が決裁権を持つ割合を尋ねたところ、2014年度では47.9%と半分以下だった。さらにIT部門の現在の役割を聞いたところ、多かったのは「システムの機能・パフォーマンスの改善」「システムの安定稼働/障害対応」「セキュリティ管理」の三つで、いずれも60%を超えた。

 一方、3~5年後に担うべき役割を尋ねたところ、現在の役割の上位3項目はいずれも40%程度となる。一方、「ビジネスモデルの開発・改良」「ビジネス・イノベーションの促進」といったビジネスに直接寄与する項目は、現在の役割よりも回答の割合が高かった。経営者の意識改革と相まって、IT部門の変革がどの程度進むかも、IT投資動向に大きく関わっていきそうだ。