シンクタンクの矢野経済研究所は2015年8月24日、道路や鉄道、上下水道など社会インフラ向けのIT市場に関する調査結果を発表した。それによると、2014年度は前年度比6.2%増の4831億円と、交通関連や水関連での更新需要、高速道路事業者向け案件などの好調を背景に堅調に推移した()。これは、東日本大震災後の国土強靭化計画などを追い風とした2012年度からの社会インフラ向け投資の伸びを反映したもの。

図●国内の社会インフラ向けIT市場規模推移・予測(出典:矢野経済研究所)
図●国内の社会インフラ向けIT市場規模推移・予測(出典:矢野経済研究所)
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 同社は、2020年度の社会インフラ向けIT市場規模を4670億円と予測。東京オリンピック・パラリンピックを控え、首都圏で高速道路や鉄道、空港、防災など社会インフラ投資の拡大をはじめ、リニア新幹線需要のあるJR東海関連プロジェクト、インフラ長寿命化基本計画に準じたインフラモニタリング業務へのIT導入の可能性などが背景にあるという。同社では、市場は増減を繰り返しながらも、需要は堅調に推移すると分析した。

 同社では、今後の社会インフラ向けIT市場として、老朽インフラ問題や要員不足などに起因したインフラモニタリング業務へのIT導入に関する期待が大きいと指摘。この分野に関しては、国や自治体、公的研究機関、大学、IT事業者、その他のインフラ関連業界での研究開発が加速しているという。

 今後の社会インフラにおけるIT需要については、多くのカテゴリーで社会インフラ向けIT需要が高まると分析。しかし、その一方で新規のインフラ建設自体が鈍化することも予測され、同社では2023年頃以降には国内での社会インフラ向けIT需要も縮小傾向に転じると予測している。

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