シンクタンクの矢野経済研究所は2015年7月13日、製造業の現場でIoT(Internet of Things)が浸透してきたことを受け、「次世代のものづくり」を実現するソフトウエアの世界市場に関する調査結果を発表した。同社は、製造業が従来活用してきたシステムである「PLM (Product Lifecycle Management)」、「MOM/MES(Manufacturing Operations Management/Manufacturing Execution System)」、「SLM(Service Lifecycle Management)」に、IoT基盤を加えたものを「次世代ものづくりソフトウェア」と定義して市場規模を試算。それによると、2014年の世界市場は181億8000万ドルに達した()。

図●「次世代ものづくりソフトウェア」の世界市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)
図●「次世代ものづくりソフトウェア」の世界市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)
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 同社は、製造業におけるIoTの活用が、産業革命に匹敵する大きな産業変化となっていることを指摘。具体例として「インダストリー4.0」を挙げている。これはドイツ政府が進める製造業の高度化に向けた産学共同のアクションプランで、ドイツの製造業の競争力維持が目的である。また、米国ゼネラル・エレクトリック社(GE)が手掛ける「インダストリアル・インターネット」では、高度なセンサーやソフトウエアで機器や施設、車両、航空機などを接続し、これまでにない効率性や新サービスの実現が進められているという。矢野経済研究所では、こうした製造業における新たな動きを実現するソフトウエアを「次世代ものづくりソフトウェア」と捉えている。

 矢野経済研究所は、今後の製造業における重要な考え方として「デジタルツイン(電子的な双子)」を提唱した。これは、現存する工場や製品について、全く同じものを仮想的(バーチャル)に再現することを指す。次世代ものづくりでは、現存する工場や製品のデータをIoT技術により取得・収集・蓄積し、それとデジタルツインとをひも付けることで、コンピューター上でのシミュレーション精度の向上が図られるという。

 また同社は、IoTの活用により工場や製品から発信されるデータ量が増加の一途をたどることを受け、企業は全体最適を可能にする情報システムの構築を急ぐ必要があると指摘。特に、国内製造業の生産現場の情報システムは分断されていることが多いため、生産実行系とエンジニアリング系とのデータ連携が今後の製造業における課題の一つになると分析している。

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