調査会社のガートナー ジャパンは2016年3月30日、世界の企業におけるデジタル・ビジネスへの取り組み関する調査結果を発表した。それによると、広義のデジタル化への支出がIT支出全体に占める割合について、「デジタル化への支出が75%以上ある」と回答した企業は、世界の平均で20%近くになっているのに対して日本企業は約8%にとどまり、大きな差があることが明らかいなった。同社は、企業の競争力に大きく影響するとされるデジタル化の動きにおいて、日本企業が出遅れていると指摘している。

 この調査は同社が世界のCIOに対し、「次年度の課題」を調査したもの。1999年から毎年実施し、今回は世界84カ国、2944人のCIOから回答を得た。同社では、この調査の中で、支出が多いテクノロジの領域についても世界と日本を比較。それによると、日本企業では、第1位がERPで41%、第2位が同率でBI/アナリティクスとクラウドで34%。一方、世界平均では第1位がBI/アナリティクスで39%、第2位がインフラ/データセンター で27%となった。同社では、世界では既に導入を完了した企業が多いERPとクラウドに、多くの日本企業が現在も取り組んでいると指摘。さらに、BI/アナリティクスやインフラ/データセンターといった、ビッグ・データを収益につなげる仕組みへの支出については、世界の平均に比べて日本企業が後れを取っていると分析した。

 同社では、企業が今後のデジタル化を成功させるためには「CIOとCEOの関係が重要」と指摘。テクノロジを踏まえたCIOの提言がCEOに受け入れられることが必要となるという。同社は、CIOとCEOの関係を「危機的関係」、「取引関係」、「提携関係」、「同盟関係」の4つに分類。日本企業では「同盟関係」と「提携関係」の割合が世界の平均に比べて低く、「取引関係」の割合がその分高くなっていると分析した。一方、「危機的関係」もないが、「全体として日本企業のCIOはCEOと会う時間を増やし、関係の強化を目指すべきである」と提言した。

 同社では現在の企業を取り巻く環境について、デジタル・ビジネスが深く浸透し、多くの企業がデジタル環境への対応能力に基づいて、ビジネスとその運営モデルを見直していると指摘。ビジネスのデジタル化が進展する中で、CIOやIT部門はそれをどうプロアクティブに支援していくのかを検討すべきという。同社は、「日本のCIOやIT部門は従来型の課題に大半の時間と工数を割かざるを得ないのが実情であり、この期待と現実のギャップをどう埋めていくかが重要な課題になる」と分析。現在の取り組みが今後のデジタル化の布石になるよう、将来を見据えたIT戦略を構築して推進することが重要と指摘している。

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