調査会社のノークリサーチは2016年2月15日、中堅・中小企業の2016年1月時点のIT投資に関する調査結果を発表した。それによると、経常利益が増えた企業と減った企業の差を「経常利益DI」として算出したところ、2015年10月時点が7.4だったのに対し2016年1月時点では7.2と0.2ポイント減少した(図1)。一方、IT投資が増えた企業と減った企業の差である「IT投資DI」では、2015年10月時点の6.2から2016年1月には5.8へと0.4ポイント減少。同社は、経常利益の実績値を示す経常利益DI値も、投資意欲を示す投資ID値も、前四半期からほぼ横ばい推移と分析した。

図1●中堅・中小企業全体における経常利益DIおよびIT投資DI􏰂の推移
図1●中堅・中小企業全体における経常利益DIおよびIT投資DI􏰂の推移
出所:ノークリサーチ
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 同社では、IT投資や経常利益が前四半期と比べてプラスとなった理由やマイナスとなった理由を尋ね、その結果を年商や業種といった企業属性別に集計・分析した。年商500億円未満の企業に、「前四半期と比べてIT投資を増やす」と回答した企業にその理由を尋ねたところ、「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が30.3%、「マイナンバー制度への対応が必要」が27.3%と多かったという(図2)。

図2●2016年1月以降のIT投資額を前四半期と比べて増やす理由
図2●2016年1月以降のIT投資額を前四半期と比べて増やす理由
出所:ノークリサーチ
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 一方で、減る理由を尋ねた結果では「売上が低迷し、IT投資費用を捻出できない」が突出して多く、「IT活用の投資対効果が不明確である」が2番目に多く挙げられたという。

 同社は、マイナンバー制度対応にともなうIT投資はユーザー企業にとっては「利益を生まない負担」となると指摘。今後、IT投資DI値が改善したとしても、その要因がマイナンバー関連であった場合はその後の反動減を見込んでおく必要があるという。また、「IT活用の投資対効果が不明確」という回答は「仮に収益が回復しても、IT投資に振り向けるとは限らない」という意思表示とも言えると分析。こうした状況を打開するためには、法制度改正などの強制力のあるIT投資だけでなく、販社やSIerがユーザー企業の売上増加やコスト削減につながるIT活用提案を続けることが重要となってくると指摘している。

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