調査会社のIDC Japanは2016年2月4日、企業におけるオープンソースソフトウエア(OSS)の利用実態に関する調査結果を発表した。それによると、自社の情報システムでOSSを「本番環境で導入している」と回答した企業は31.3%で、2014年に実施した調査での31.5%とほぼ変わらなかった。2013年の調査でも32.0%だったことから、同社では、この3年間で大きな変化はなかったと分析した。

 同社は、従業員規模別でも調査。それによると、「本番環境で導入している」と回答した企業は1000~4999人で36.8%、5000人以上で39.4%と4割近くに達した。その一方で、100~499人以下の企業では、24.8%と規模別で最も低い水準となった。同社は、企業の規模に比例してOSSの導入率が高くなる傾向があると指摘。この背景には、多くの中小企業ではOSSを導入して管理する人材が乏しいということがあるという。同社は、そのことがOSSの導入率が上昇しない要因の一つと指摘している。

 また、同社は、OSSを使用している企業に対して、より詳細に利用実態について調査した。本番環境で使用しているOSSの種類を調査した結果、Linuxが67.3%で最も高く、次いでRDB(リレーショナルデータベース)のMySQLで53.1%。さらには、アプリケーションサーバーのTomcatが35.6%、RDBのPostgreSQLが35.0%、システムソフトウエアのSamba(21.4%)、システム管理のZabbix(16.2%)、ハイパーバイザーのXenが16.2%と続いた。

 近年、クラウドインフラ領域で注目を浴びているOpenStackは6.1%、コンテナプラットフォームのDockerは4.5%にとどまったという。なお、ビッグデータ関連では、データ分散処理のHadoopが6.8%、NoSQLの中ではMongoDBの使用率が最も高く4.5%。同社は、新興OSSは認知度も高まってきており、今後のさらなる普及が見込まれると分析した。

 なお、この調査ではクラウドサービスとOSS使用の関係も分析。IaaSを利用している企業の42.5%はOSSを積極的に使用していく方針で、43.8%はOSSを適材適所で使用していく方針という。PaaSを利用している企業においても、53.1%がOSSを積極的に使用していく方針で、34.7%はOSSを適材適所で使用していくという。一方、IaaSあるいはPaaSを今後も含めて利用しないという企業では、OSSを積極的に使用していく方針は20%未満にとどまっているという。同社では、OSS使用はクラウドサービス利用との関係性が強く、クラウドサービスの普及がOSS使用拡大のドライバーになると指摘した。

 同社は、「現在、多くのIaaSやPaaSではOSSが標準サービスとして使用できるようになっている」とコメント。今後、クラウドサービスの普及にともない、そのクラウドサービス上でOSSを使用する企業がさらに増加していくと考えられると分析している。その上で、「企業ではOSSの使用に対する抵抗感も薄まり、技術力やノウハウが溜まっていくことで、オンプレミスシステムでも様々なOSSを活用していく企業が増えていくとみられる。すなわち、クラウドサービスの普及がOSS使用拡大のドライバーになる」と指摘した。

IDCの発表資料へ