NECは2014年11月5日、アフリカのアンゴラと南米ブラジルを結ぶ大容量光海底ケーブル「South Atlantic Cable System(SACS)」の建設請負契約を、アンゴラケーブルズと締結したと発表した()。SACSの総建設費は約1.6億ドル(約182億円)。2016年末の稼働を目指す。

図●「South Atlantic Cable System(SACS)」の敷設ルート
図●「South Atlantic Cable System(SACS)」の敷設ルート
[画像のクリックで拡大表示]

 アンゴラ・サンガノとブラジル・フォルタレザを結ぶSACSは、総延長約6200キロメートル。米国とブラジルを結ぶ海底ケーブルと、フォルタレザで接続する。毎秒40テラビットの伝送速度を見込む。アンゴラは石油やダイヤモンドなどの天然資源を背景に経済成長を続けており、ブラジルや同国経由で米国との国際通信が急増している。

 NECによると、南大西洋を横断してアフリカ大陸と南米を結ぶ光海底ケーブルは世界初だという。従来、アフリカと米国を結ぶルートは欧州経由のものしかなく、距離が長かった。南大西洋を直接通る光海底ケーブルを敷設し、低遅延化と大容量化を目指す。

 NECは2014年に入って、光海底ケーブルの敷設プロジェクトを連続して手中にしており、大陸間を横断する大型案件はSACSが3件目となる(関連記事:太平洋に大型商機来たる、NECが光海底ケーブルで560億円を手中に)。同社はアジア・太平洋でのプロジェクトを得意としているが、大西洋のプロジェクトを手掛けるのは初めて。

 光海底ケーブルのプロジェクトでは、敷設エリアと製造現場の距離が重要になる。両者の距離が近ければ、輸送コストを抑えることができるからだ。NECの光海底ケーブルは、子会社のOCCが九州で製造しており、欧米勢とのプロジェクト獲得競争をアジア・太平洋で優位に進めてきた。一方で、遠隔地となる大西洋では苦戦を強いられてきた。NECにとってSACSは、大西洋での実績を作り、事業を拡大させるための試金石となる。

 今回、NECが大西洋のプロジェクトを獲得できた背景には、同社の豊富な実績が評価されたほかに、発注者側にリスクを分散させたいとの意図もありそうだ。SACSが接続を予定するブラジルと米国間の光海底ケーブルの建設は、ある1社が手掛けている。建設事業者を1社に集中させると、何か支障が出た際に影響範囲が広範にわたる恐れがある。

■変更履歴
NECからの申し入れにより、最終段落の記事を一部変更しました。[2014/11/05 16:05]