写真●「ハウス・オブ・カード」を成功させたビッグデータ分析を語る、主演・製作総指揮のケヴィン・スペイシー氏
写真●「ハウス・オブ・カード」を成功させたビッグデータ分析を語る、主演・製作総指揮のケヴィン・スペイシー氏
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 ビッグデータをメディアビジネスに生かした著名な成功例の一つに、2013年に米ネットフリックスが独自に製作した政治ドラマシリーズ「House of Cards(邦題:ハウス・オブ・カード 野望の階段)」がある。このドラマの主演男優にして製作総指揮を執ったケヴィン・スペイシー氏が、米IBMが2014年10月末にラスベガスで開催した「IBM Insight 2014」でその舞台裏を語った(写真)。

 この作品は、これまでテレビ局製作のドラマを配信していたネット配信大手の米ネットフリックスが、自ら約1億ドル(110億円)もの資金を投じて製作し、全米で大ヒットしたもの。2013年のエミー賞で9部門にノミネートされ、このうち監督、撮影、キャスティングの3賞に輝いた。

 スペイシー氏らが、英国のドラマを原作とした「ハウス・オブ・カード」の企画を大手テレビ局に持ち込んだところ、どのテレビ局からも異口同音に言われたのが「では、パイロット版を作ってくれないか」だった。

 米国のテレビドラマ業界では、まず製作会社が1話分を作り、テレビ局がそれを見て連続ドラマ化の可否を決める「パイロットシステム」を採用している。事前にパイロット版で番組の質や視聴者の反応を知ることで、大金を投じながら大コケするリスクを抑えることができる。

 だがスペイシー氏は、この仕組みを「信じがたいほどのお金、才能、時間の無駄使い」と断じる。2013年には、米テレビドラマ業界ではパイロット版の製作だけに合計9億ドル(1000億円)が投じられ、うち三分の二がお蔵入りになったという。

 これに対して米ネットフリックスは、パイロット版を製作しろとは言わなかった。それどころか、ファーストシーズン(13話)の製作に1億ドルを投じることを即決した。製作に当たっても、同社の幹部はスペイシー氏らに対して「これをやれ、あれをやれとは言わず、シナリオライター、監督などの製作側の人間を信頼してくれた」(スペイシー氏)。