写真●ASUS JAPANのSIMロックフリーのスマートフォン「ZenFone 5」
写真●ASUS JAPANのSIMロックフリーのスマートフォン「ZenFone 5」

 楽天が子会社のフュージョン・コミュニケーションズを通じて、通話SIMの提供を2014年10月29日に始めることが本誌取材で明らかになった。2014年10月28日にASUS JAPANが国内発売を発表したSIMロックフリーのスマートフォン「ZenFone 5」(写真)のセット販売も開始する。

 新たに提供するのは「楽天ブロードバンド 通話SIM」。月額利用料金は月内で利用できる通信容量と通信速度によって異なり、最も安いプランは通信速度最大200kbpsで月額1250円。下りの通信速度が最大150Mbpsの高速通信が可能なプランは通信容量2.1GBプランが1600円、4GBプランが2150円、7GBプランが2960円となる。

 ASUSのZenFone 5を同時に申し込んだ場合は端末料金として月額料金に一律1200円を加算する。楽天スーパーポイントを付与するキャンペーンを展開し、フュージョンが2013年12月から提供している、電話番号をそのまま使え通話料金を安くできる通話アプリ「楽天でんわ」への加入を促す。

 楽天がセット販売するZenFone 5は5インチのIPS液晶で、Android 4.4.2を搭載したスマートフォン。800万画素のカメラを内蔵しており、日本市場向けモデルでは日本語変換ソフトとして「ATOK for ASUS」がプリインストールされている。重さは約145gで、連続待ち受け時間はLTEで約180時間、連続通話時間は約1230分。単体で購入すると16GBモデルは2万6800円、32GBモデルは2万9800円となっている。

 楽天にとって、EC(電子商取引)市場の競合になる米アマゾン・ドット・コムは米国時間の10月23日、自社製のスマホ「Fire Phone」の販売不振で1億7000万ドルの損失を計上したと発表したばかり。いまだ8300万ドル相当のFire Phoneが在庫として残っていることを明らかにした。

 楽天は電子書籍端末やタブレット端末は子会社のコボを通じて自社で開発しているものの、スマホに関しては自社開発を避け、フュージョンのSIMを通じてスマホ市場に歩を進める戦略を取っている。

 日本経済新聞は10月25日、総務省が携帯電話各社に対し、2015年5月以降に発売される端末にSIMロック解除を義務づける方針であることを報じた。SIMロック解除が正式に義務化されれば、米アップルのiPhoneも2015年秋に発売される新機種から対象になる。

 楽天が開始する通話SIMはこうしたSIMロック解除の流れを追い風に、加入者拡大をもくろむ。通話SIMの成長は、楽天が築いてきた経済圏とどのようにシナジー効果を出せるかにかかっていると言える。