パスロジは2014年10月24日、複数サイトのログインパスワードを記録しておく目的に特化したメモ帳アプリ「PassClip」(図1)を発表し、同日App Storeでリリースした。iPhone/iPadで利用できる。縦横のマトリックス(座標)の位置情報を利用してパスワードの文字を拾う仕組みであるため、パスワードを記憶しておく必要がない。また、他人がマトリックス表を見てもパスワードが分からないため、同ソフトを使うためにマスターパスワードを入力する必要がない。

図1●PassClipの使い方の概要(出典:パスロジ)
図1●PassClipの使い方の概要(出典:パスロジ)
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 PassClipは、Webサイト/サービスのログインパスワードを記録しておくためのパスワード帳である。最大の特徴は、パスワードをそのままの形で記載するのではなく、パスワード文字列(8文字)を四つに分割し、分割した個々の2文字を縦5マス×横5マスのマトリックスの中にバラバラに埋め込んだものをパスワード帳として利用することである。パスワードを調べたいときは、あらかじめ登録しておいた位置にある2文字を、登録しておいた順番でつなぐことで、パスワードが分かる仕組み。

 Facebookや経費精算システムなど、ログインするWebサイトごとにパスワードを登録しておける。個々のサイトのパスワードを新規に登録する際に、そのサイトのパスワードを調べるために必要なマトリックス型のパスワード表を作成する。ユーザーは、マトリックスから文字を拾う際の位置と順番だけを記憶しておけば、サイトごとに異なるパスワードを使い分けられる。

様々な文字種に対応、ローマ字のひらがな表現も可

 パスワードとして利用できる文字種は、設定画面から制御できる。パスワード生成時には、設定内容を反映した形でマトリックス表が作られる。利用できる文字種として、(1)英字小文字、(2)英字大文字、(3)数字、(4)記号、を指定できる。英字小文字だけを選べば英字小文字だけでマトリックス型のパスワード表を生成し、英字小文字と英字大文字と数字を選べば、これらが混在したマトリックス型のパスワード表を生成する。

 マトリックスの1マスには、2文字が書かれる。これを四つつなげることで8文字のパスワードが得られる。8文字を超えるパスワードを記載することも可能であり、この場合は、9文字以降に付加する任意の文字列をパスワード生成時に指定する。この付加文字列はマトリックス表の下部に書かれているので、マトリックスから拾った8文字に付加文字列を加えたものがパスワードとなる。

 なお、パスワードを暗記しやすいように、ローマ字読みのひらがなで表現したマトリックス表を作成することもできる(図2)。1マスに入る英字2文字をローマ字のひらがな1文字で表現する形である。例えば「ne」は「ね」になる。ユーザーはマトリックス表からひらがな4文字を拾えばよいので、簡単に暗記できる。パスワード入力時にローマ字変換すればよい。

図2●ローマ字変換でひらがな4文字でも運用できる(出典:パスロジ)
図2●ローマ字変換でひらがな4文字でも運用できる(出典:パスロジ)
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クラウドバックアップで端末紛失や複数端末に対応

 端末を紛失してしまうことへの対策や、複数の端末でパスワード情報を共有するための仕組みとして、クラウドサービス側で最新のパスワードデータをバックアップする機能を備えている。パスワードの新規作成時や変更時(作り変え時)など、データの内容に変更が加わったタイミングでクラウドにデータをバックアップする。これにより、端末を紛失してもパスワードが分からなくなることがないほか、複数の端末でパスワード帳を共有できる。

 端末紛失時や他の端末からデータを共有する場合は、あらかじめ登録しておいたメールアドレスあてに本人認証用のWeb画面のURLが送られてくる。このWeb画面はマトリックス型の認証画面となっているので、登録してある位置と順番でパスワードを拾って入力する。これにより、クラウド側のバックアップデータと暗号鍵を端末側にダウンロードする。一度認証を受けてしまえば、後は端末側にデータと暗号鍵があるので、クラウドと通信することなくパスワードを閲覧できる。

 価格(消費税込み)は、パスワードの登録件数が5件までは無料。アプリ内で課金することにより、100円で登録件数を3件増やせる。最大で1000件(事実上無制限)までパスワードを登録できる。大量にパスワードを記録したいユーザー向けには、年間2400円で登録件数に制限がない契約プランも用意した。

今後は文字列のコピペを可能に、Android版もリリース

 今後の予定として、Android版をリリースする。また、マトリックス表からパスワードを拾う方法を拡大し、位置をクリックすることでパスワード文字列をコピーできるようにする。これをログイン画面にペーストすれば、パスワードを暗記する必要がなくなる。現状のバージョンでは、マトリックス表はパスワードを含んだメモ帳と同じであり、目視でパスワードを拾って短期的に暗記する必要がある。

 なお、パスロジは、マトリックス型のワンタイムパスワード認証ソフト「PassLogic」を開発しているベンダーである。今回のPassClipは、マトリックスの位置情報を拾ってパスワードを調べるというPassLogicのエッセンスを応用したアプリケーションに当たる。