写真●要望書の提出を終えて記者団の質問に答えるKDDIの藤田元・渉外・広報本部長。
写真●要望書の提出を終えて記者団の質問に答えるKDDIの藤田元・渉外・広報本部長。
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 KDDI(au)やソフトバンクグループなど263者は2014年10月23日、NTT東西による光回線の「サービス卸」の料金公表などを求め、総務大臣宛ての要望書を提出した。KDDIは電力系通信事業者やCATV事業者、自治体などを中心とした236者の連名で、ソフトバンクグループはヤフーやワイモバイル、関西ブロードバンドなどを含めた27者の連名で、それぞれの陣営が別々の要望書を吉田眞人・電気通信事業部長に手渡した。

 NTT東西のサービス卸の是非を巡っては、総務省の「情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会」で議論され、容認する旨の答申案が10月20日に出たばかり。サービス卸は適正性や公平性、透明性の観点で課題はあるものの、指定電気通信役務に該当するため、業務改善命令や禁止行為規制といった現行の規制の枠組みで一定の程度は確保できると判断。あとは「外部による検証の可能性も含め、一定の透明性が確保される仕組みの導入を検討することが適当」と、総務省に一任して決着した経緯がある。

 KDDI陣営の要望は、サービス卸の透明性確保に尽きる。NTT東西はサービス卸の提供条件を10月16日に公表(関連記事1)したが、肝心の提供料金は機密保持契約を締結したパートナー企業だけに開示するとして、公表を拒んでいる。「NTTドコモが最大のパートナー企業となるのは間違いなく、販売奨励金などの形で営業支援費がNTT東西からNTTドコモに還流する可能性がある。NTT東西は公平に提供すると主張しているが、本当にそうならば、なおさら公表すべき。諸外国でも、ボトルネック設備についてはすべて公開が原則になっている」(KDDIの藤田元・渉外・広報本部長、写真)と主張する。

 ソフトバンク陣営も要望はほぼ同じ。サービス卸に対して接続約款と同様の規律、すなわち接続約款の事前認可や公表、相対取引の禁止などを求めた。やはりソフトバンク陣営が懸念するのも、NTTグループ、特にNTTドコモへの優遇である。個別の営業支援策(販売奨励金)は契約書に明記しなくても組めるので、総務省がNTT東西の提出資料をチェックしても見破れない可能性があると指摘する。サービス卸を通じたグループ一体の営業活動や業務連携など、NTT東西に課された禁止行為の監視体制を強化するとともに、NTT東西からグループ各社への営業支援費を通じた優遇を明確に禁止すべきと要望した。

 総務省は、情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会の答申案に対するパブリックコメントを11月19日まで募集中。サービス卸の透明性確保は総務省の裁量で決めることになっており、早ければ11月中にも明らかになる見通し。