写真●米オラクルのダグ・ヒューズ アプリケーション開発&プロジェクトマネジメント担当バイスプレジデント
写真●米オラクルのダグ・ヒューズ アプリケーション開発&プロジェクトマネジメント担当バイスプレジデント
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 「単に子会社だけでなく、本社レベルでクラウドERP(統合基幹業務システム)を導入しようとする方向に着実に向かっている。導入を成功させるコツは、小さな成功を積み上げることだ」。米オラクルのダグ・ヒューズ アプリケーション開発&プロジェクトマネジメント担当バイスプレジデント(写真)は2014年10月23日、クラウドERPに関する記者説明会でこう語った。

 オラクルは9月に開催した年次イベント「Oracle OpenWorld 2014」で、会計や購買、プロジェクト管理などの機能を提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型ERPの最新版「ERP Cloud Release 9」を発表した。「従来のERP製品は1年から1年半ごとにバージョンアップしていた。しかし、クラウドの世界ではその頻度では許されない。コンシューマー向けサービスは頻繁なアップデートが期待されており、エンタープライズ向けも同じだ」。ヒューズ氏はこう語り、「ERP Cloudは年3回のペースでバージョンアップしている」(同)と話す。

 ERP Cloud Release 9では、225以上の新機能を追加したという。「決して小規模なバージョンアップではない」(ヒューズ氏)。新機能の一つが「Fusion Accounting Hub Reporting Cloud Service」。同社のERP製品「Oracle E-Business Suite」のデータに対する定型/非定型の分析やレポーティングをクラウド上で可能にするもので、同社のOLAP(オンライン分析処理)サーバー「Essbase」やBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「BIEE(Enterprise Edition)」などの機能を利用できる。10月23日付で、日本でも提供を開始したと発表した。今後は「業種特化の機能も強化していく」とヒューズ氏は話す。

 SaaS型ERPをスムーズに導入していくためにはまず、「クラウドを導入したいと欲していて、導入しやすそうな組織・部門」から導入していくことをヒューズ氏は勧める。「その組織・部門でスケジュール通りに導入でき、コストを削減できることが実証できたら、他の組織・部門に導入していく。このような漸進的なアプローチが有効だ」(ヒューズ氏)。

 まず子会社に導入する、というのはその典型だとする。ヒューズ氏が例として挙げたのは、韓国の鉄鋼大手であるポスコ(POSCO)。「本社のコアERPについては、従来通りのオンプレミス型での運用を望んでいたが、世界の子会社の会計システムとしてERP Cloudの採用を決めた。子会社への投資を極力抑えたいと考える一方、業務の標準化を進める必要があったからだ。同社のような導入の進め方は、日本企業にフィットするのではないか」とヒューズ氏はみる。