写真●3人のパネリスト。左から日本マイクロソフトの佐藤久氏、IIJの神谷修氏、サイボウズの栗山圭太氏(撮影:新関雅士)
写真●3人のパネリスト。左から日本マイクロソフトの佐藤久氏、IIJの神谷修氏、サイボウズの栗山圭太氏(撮影:新関雅士)
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 2014年10月15日から17日にかけて東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2014」で、「時代はクラウドありき、高まる速さ、柔軟さ、品質の重要性」と題するパネルディスカッションが実施された。クラウドベンダー3社が、クラウドに移行する/際のポイントや課題を踏まえた上で、求められるクラウドの姿を議論した。

 パネリストは3人。日本マイクロソフトの佐藤久氏(業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長)、インターネットイニシアティブ(IIJ)の神谷修氏(プラットフォーム本部 サービス企画室長)、サイボウズの栗山圭太氏(営業本部 本部長代理)だ。モデレーターは、日経BP社の中村建助(ITpro編集長)が務めた。

 議論の冒頭では、ベンダー3社がそれぞれのクラウドサービスについて紹介した。日本マイクロソフトは「Microsoft Azure」を運営しているほか、データセンターを構成するミドルウエア群を取りそろえる。IIJは、「IIJ GIO」を運営している。IaaSを中心にミドルウエアもクラウドで提供している。サイボウズはグループウエアのSaaSとデータベースアプリ開発環境の「kintone」を運営している。

ITは所有から利用へ、ビッグデータでクラウド自身も変容

 議論の最初のテーマは、2006年にクラウドという言葉が登場してからこれまでの間に「クラウドが企業の情報システムをどう変えたのか」についてである。

 この問いに対してIIJの神谷氏は、「以前と比べて圧倒的にクラウドサービスのコストが下がった」と指摘。ハウジング/ホスティングサービス時代と比べてサーバー単価は大きく下がったとした。サーバーの性能と信頼性も上がった。さらに、コスト単価だけでなく、利用したいときにすぐにITリソースを調達できるようになったと、クラウドの利点を挙げた。

 日本マイクロソフトの佐藤氏は、米Microsoft自身がクラウドでビジネスを大きく変えたと振り返った。また、クラウドを取り巻く環境がクラウド自身を変えているとも指摘。現在では、IoT(Internet of Things)やモバイルなどトレンドが膨大なデータを吐き出している。こうしたデータを受け入れられるようにクラウドが進化しているという。

 例えば、ITの調達方法は、所有から利用へと変わった。これにより、大企業と中小企業の境がなくなった。従来は企業の規模に応じて情報システムのサイズやシステム構成が異なっていたが、現在では初期投資が必要ないので、中小企業でもリソースの調達が容易になったと分析した。

 サイボウズの栗山氏は、同社の販売実績のグラフを参照しながら、クラウドが企業のビジネスに大きな影響を与えていることを示した。同社のグループウエアの有償契約社数は2007年で頭打ちとなったが、クラウド型でも利用できるようにした途端に販売実績が急増した。クラウド開始後は月当たり400社のペースで新規契約社数が増えているという。