写真●日経SYSTEMSの中山秀夫副編集長
写真●日経SYSTEMSの中山秀夫副編集長
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 「大手のユーザー企業でもまだ大半は、IaaS(Infrastructure as a Service)の導入を検討している段階。いざ導入したときに成功できるよう、先行企業の事例に学びたい」──。

 2014年10月15日から17日にかけて東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2014」で、日経SYSTEMSの中山秀夫副編集長は「“ハイブリッドクラウド”構築 成功の秘訣」と題した講演を行い、このように訴えた(写真)。

 中山副編集長によると、IaaSの導入が難しい大きな原因の一つとして、オンプレミス環境とのハイブリッド構成にすることが挙げられるという。「保有するサーバーやストレージなどの減価償却が終わらないうちに、システムをIaaSに移せば、除却という会計処理が必要になり、一気に費用計上しなければならない。そのため当面は、オンプレミス環境を残しつつIaaSを使う“ハイブリッド構成”を取らざるを得ない」(中山副編集長)。それだけに、従来の常識が通用しないケースが少なからず発生する。このため、先行企業の事例を学ぶ価値が高いのだという。

 講演では、IaaSで世界トップシェアの「Amazon Web Services(AWS)」を、「必然的に検討候補に入るサービス」と位置付け、AWSの導入事例における想定外とその対処法を八つ紹介した。

 例えば、オンプレミス環境とAWS間のデータ連携の想定外として、東急ハンズの事例を取り上げた。東急ハンズは、POS(販売時点管理)サーバーをAWSに移行した際、AWS Direct Connectというネットワークサービスを用いて、オンプレミス環境とAWSを結んでいた。ネットワークは1本で、1Gbpsの容量だったという。

 ネットワーク容量には余裕があったが、AWS Direct Connectのメンテナンスで年に数回通信できなくなる時間が生じることが問題になった。AWS上のPOSサーバーとオンプレミス環境に残したポイント管理サーバーを常時連携させる必要があるからだ。そこで東急ハンズは、AWS Direct Connectのネットワークを1本追加したという。

 中山副編集長は、「AWSを本格利用するユーザー企業では、AWS Direct Connectを2本、3本と多重化するのがトレンドになっている」と指摘。「コスト削減を目的としてAWSを導入した場合でも、ネットワークコストは絞りすぎるのは要注意だ」と警鐘を鳴らした。