写真●日経コミュニケーションの堀越功記者
写真●日経コミュニケーションの堀越功記者
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 「iPhone 6の発表以来、携帯各社のネットワーク競争は激化している」――。2014年17日まで東京ビッグサイトで開催したICTソリューションの総合展示会「ITpro EXPO 2014」のメインシアターで日経コミュニケーションの堀越功記者が、国内携帯キャリア各社のネットワーク戦略と第5世代移動体通信システム(5G)について講演した(写真)。

 講演の冒頭で堀越記者は、2013年度の国内携帯電話端末の出荷台数3941万台のうち、4割弱がアップル製だと紹介。「国内の携帯各社はアップル頼みである。iPhoneの販売戦略は各社の最重要課題」(堀越記者)。

 米アップルが2014年9月9日(米国時間)に発表したiPhone 6/6 Plusはネットワーク面で新たな強化があった。具体的には、下り最大150Mビット/秒のカテゴリー4(Cat-4)に対応したことや、複数の周波数帯を束ねて高速化できるキャリアアグリゲーションが可能になった。周波数帯としては、Band 28(700MHz帯)、Band41(2.5GHz帯)などにも対応した。

 「NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社の競争条件は、それぞれが保有するバンドがiPhoneに対応するかどうか」(堀越記者)。各社がiPhoneを取り扱う現在では、端末の性能や料金での差異化が難しくなったからだ。堀越記者は3社のネットワーク面での戦略について解説した。

 NTTドコモは1.5GHz帯、1.7GHz帯のバンドをすべてLTEに割り振り、「フルLTE」と表現する戦略。また、キャリアアグリゲーションについては、最大225Mビット/秒の速度を目指して2014年度中に導入する予定とする。

 KDDIは、iPhone 6/6 Plusが新たに対応するキャリアアグリゲーションに対応するほか、最大150Mビット/秒の速度、さらには関連会社のUQコミュニケーションズが2.5GHz帯で展開するWiMAX 2+に対応することで「全部入り」とアピールする戦略だ。

 ソフトバンクモバイルの戦略について堀越記者は「900MHz帯のLTE化が遅れているため、意外に苦しい印象だ」とする。

 堀越記者は3社の戦略を踏まえた上で「実際のつながりやすさとはなにか」と持論を展開。自身が実施したLTEの実効速度について調査した結果を紹介した。調査期間は2014年5月20~28日の約1週間、場所は東京都港区青山。同結果によれば「時間帯や周囲の通行人の流れなどによって実効速度は大きく変わる」(堀越記者)という。

 では、第5世代移動体通信システム(5G)ではどのような「つながりやすさ」を実現すべきなのか。堀越記者は「単に大容量や超高速を実現するのではなく、低遅延やバッテリー持ちの向上など、幅広い要件を満たさなければならない」と話す。

 堀越記者は「5Gにおけるキーワードは”柔軟性”だ」として、5Gの要件を実現するための条件として、ミリ波帯に対応する超広帯域での通信や伝送品質を向上するための「Massive MIMO技術」の採用などを挙げた。