写真●アマゾンデータサービスジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏(撮影:新関雅士)
写真●アマゾンデータサービスジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏(撮影:新関雅士)
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 「クラウドは破壊的イノベーション。新興企業でも初期投資なく事業をスタートできる。うまく行かなかったら止めればいい」---。アマゾンデータサービスジャパン社長の長崎忠雄氏は2014年10月16日、ITpro EXPO 2014で講演し、クラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」の特徴と動向、および国内4社の活用事例を紹介した(写真)。

 冒頭で長崎氏は、AWSは2006年にサービスを開始してから8年の歴史しかないが、ITの変革期の中枢にいるとして、IDCジャパンの市場レポートを紹介した。レポートでは、メインフレーム/端末とC/S(クライアント・サーバー)に次ぐ第3のプラットフォームとして、モバイル/ソーシャル/ビッグデータ/クラウドの四つを挙げている。

 これら四つのテクノロジーが第3のプラットフォームであることは十分に実感できると長崎氏は言う。クラウドは、必要な時に必要なだけITリソースを調達できる。ビッグデータは、データ分析のコストを大きく減らす。モバイルは、情報の生成、流通、共有、保存の流れを大きく変容させる。

 第3のプラットフォームのインパクトは大きく、破壊的イノベーションであると長崎氏は説明する。大企業がこれまで作り上げてきたIT基盤に安住してしまっていると、気が付いた時には新興企業に事業を侵食されてしまうという。長崎氏は、書籍『イノベーションのジレンマ』を紹介し「新しい流れに目を向けないと商機を逸する」と説いた。

 イノベーションのジレンマは、ITエコシステムにも起こっているという。従来のオンプレミス型のITシステムは、余剰なリソースを運用しなければならないので無駄が多いという。第3のプラットフォームの時代に新興企業が力をつけていく中で、大企業もまた意識を変える必要があるとした。

顧客の要望を反映するAWS、2013年は280以上のサービスを追加

 続いて長崎氏は、2006年から現在までのAWSの進化について説明した。そもそも米Amazon.comは物販企業であり、物販と同様にマウスのワンクリックでハードウエアやストレージを調達したいという需要からクラウド事業をスタートさせた。現在では世界の9拠点にデータセンターを持ち、190カ国以上で数十万社の顧客が使う。値下げは累計で45回に及ぶ。

 45回の値下げについて長崎氏は、「値下げできるのは米Amazon.comのDNA」と言い切る。物販企業はハイボリュームローマージンであり、低利益でオペレーションするノウハウがあるという。その上で、一定の利益が出たら顧客に還元するという。4年前と比べると、スペックが向上している一方で価格が下がっている。これに対して、クラウド以前は、4年前に買ったものは減価償却中で、現在の水準では低スペックになってしまう。

 AWSはまた、顧客の声を聞き、要望を取り入れてきたという。機能強化の件数は毎年増えており、2013年は280以上の新機能を追加したという。こうした機能に興味を持ったら、まずは使って、気に入らなかったらやめればいいと長崎氏は言う。また、仮想サーバーだけでなく、ミドルウエアなどを提供するサービスも豊富であり、その数は40以上になっているという。