写真●Google Glassをかけて講演するベンチャークレフの宮本和明代表
写真●Google Glassをかけて講演するベンチャークレフの宮本和明代表
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 「3年後の2017年、Googleの自動運転車が製品化され、みなさんも購入できるようになる。正式発表はされていないが、シリコンバレーではそう言われている」――。

 2014年10月15日から17日まで東京ビッグサイトで開催されている「ITpro EXPO 2014」のメインシアターで、ベンチャークレフの代表・宮本和明氏は「シリコンバレーに学ぶ!日本企業の成長戦略」と題して講演。Googleの自動運転車や「Google Glass」などのウエアラブルデバイスを例に取りながら、日本企業の課題について詳しく語った。

 宮本氏によると、自動運転車に取り付ける各種センサーのモジュールだけでも700万円以上はするという。気軽に購入できる価格帯とはならないようだが、自動運転車の製品化はもう目前に迫っている。「シリコンバレーにいると、テクノロジーが世の中をドラスティックに変えていく様子を肌で感じる。Googleのような企業は変化を起こせるが、日本企業は世界一の技術力を持っているにも関わらずムーブメントを起こせていない」(宮本氏)。

 宮本氏は、持参したGoogle Glassをかけながら、ウエアラブルデバイスの開発において日本企業が成功できなかった理由を「プラットフォームビジネスという視点が欠落していたから」と語った(写真)。

 プラットフォームビジネスの例としては、Google Glassでオンラインバンキングを利用する事例や「ウエアラブル ワレット」として利用できる事例を紹介。「決済のときには金額情報が組み込まれたQRコードをGoogle Glassで確認し、2回うなずけば決済が完了する。ウエアラブルデバイスというハードだけでなく、それを活用するためのプラットフォームも併せて構築していく。そこをできるかどうかがビジネスとして成功するかどうかのポイントとなる」(宮本氏)。

 また宮本氏は、ウエアラブルカメラとして人気の「GoPro」についても触れ、「GoProはカメラメーカーではなく、コンテンツプロバイダーとして成功した」と指摘した。GoProは身体に取り付けられるカメラで、スキーやサーフィンをすると、まるでプロが撮影したような映像が撮れる。ユーザーが撮った動画をYouTubeにアップするので、それを多くの視聴者が楽しめる。

 さらに、GoProでは、ユーザーからの動画を集めて1つのコンテンツとして航空会社に提供し、機内の映像プログラムにラインアップしてもらっているという。

 一方、自動運転車の事例では、Googleがなぜ自動運転車を実用化できたのかの理由について、「ゼロから全てを自社開発するのではなく、外部から技術を購入したこと、併せて国の補助を受けて開発を進めてきたことによる」と述べた。

 「イラク戦争で危険な戦闘地域に物資を運ぶのに、自動運転車が必要だったという経緯がある。そのために国防総省からの補助で開発が進められている」とし、「自動運転車のような先進的な技術の開発であっても、そのほぼすべてを自社開発でまかなう日本企業は非常に不利な状況にある。だから世界を驚かすような開発ができない」と課題を指摘した。

 宮本氏は「日本の企業の技術力は世界一だが、その技術を生かしたビジネスモデルを構築できていない。本日の講演から、その理由や課題を考えるヒントを見つけていただきたい」として講演を終えた。