写真◎富士通の谷口典彦取締役執行役員専務
写真◎富士通の谷口典彦取締役執行役員専務
[画像のクリックで拡大表示]

 東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2014」特設アリーナで2014年10月16日午後、富士通の谷口典彦取締役執行役員専務が「デジタルビジネス時代を勝ち抜く5つのポイント~イノベーションを実現する新たなインテグレーション」と題した特別講演を行った(写真)。

 富士通グループで複数の大規模プロジェクトに関わってきた谷口氏は現在、富士通のインテグレーションサービス部門のトップとしてシステムインテグレーション、システム運用、アプリケーション、ミドルウエア、ネットワークサービスの各事業を統括する立場にある。

 谷口氏は、SIビジネスの最近のすう勢のほか、社会情勢や技術トレンド、富士通社内での新たな試みなどを広く盛り込みながら、迫り来るデジタルビジネス時代とそこで勝ち抜くためのインテグレーションについて語った。

「スタートレック」が描いた未来が現実に

 序盤で、谷口氏が見せたのが人気SF映画「スタートレック」のいくつかの場面である。「カーク船長が携帯していた『コミュニケーター』は、当時は非常に斬新で格好良かったが、今はあたりまえの存在になっている。また、ピカード艦長が携帯していた『PADD(パッド)』などはまさに、私たちが日ごろ使っているものと同じだ」と指摘。「未来とはすなわち今である」と述べた。

 谷口氏は、ICTの進化により、産業革命に匹敵するイノベーションが起きているとし、「身近にある、あらゆるものがネットにつながることにより、情報は爆発的に増える。これをうまく利用できるかどうかが、社会の発展、企業の競争力に直結していく」と訴えた。

 進むイノベーションの実例として、谷口氏がまず挙げたのが、日本国内の自動車の4%から、1000億件に及ぶデータが収集されているという事実である。次いで、35カ国400カ所以上で行われているというスマートシティの取り組みに言及した。

 「ニースやバルセロナを訪れたが、より生活に密着した取り組みが役立つという実感があった。例えばごみ収集。収集容器にセンサーを取り付けて、満タンに近づいたら収集車が来る仕組みだ。収集業務の効率化だけでなく、市民にとっては、いつでもゴミを捨てられるというメリットを生んでいた」。

 富士通自身が現在取り組むのが、ITによるワークスタイル変革だ。国内外の富士通グループ各社で、同じコミュニケーション基盤を使うことから始めた。国内の11万人分を統一したところ、グループ全体で1日平均2800回に上る会議の出張コストが1割減ったという。

 また、コミュニケーション基盤関連の開発経費が半減した。「まだ第一歩というところ。次は海外の7万人に広げる計画」と谷口氏は語る。

5つのポイントと実例を紹介

 まとめとして、谷口氏はデジタルビジネス時代を勝ち抜く5つのポイントを示した。(1)俊敏かつ柔軟な情報基盤を作る、(2)既存資産の近代化、(3)ハイブリッド開発、(4)人、モノ、コトをつなぐ、(5)共創による人のエンパワーメント、である。これらに実際に取り組んだ例として、通信会社や新聞社、生命保険会社、製造業、地方自治体の例をそれぞれ紹介した。

 特に(5)の共創による人のエンパワーメントについては、富士通自身も、ハッカソン「FUJI HACK」の実施や、富士通の社名を出さずに関わっているという、共創を目的としたコミュニティ「あしたのコミュニティーラボ」などの新しい試みを進めているという。