写真●日経BPイノベーションICT研究所 上席研究員 星野友彦
写真●日経BPイノベーションICT研究所 上席研究員 星野友彦
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 2014年10月15日から17日まで東京ビッグサイトで開催中の展示会「ITpro EXPO 2014」にて、日経BPイノベーションICT研究所 上席研究員の星野友彦(写真)が講演を行い、同社が2014年10月14日に発表した第9回「クラウドランキング」について解説した。

 ランキングの詳細はすでに公開されているとおり、「ベストブランド」ではグーグル、セールスフォース・ドットコム、アマゾン・ドット・コムという不動のトップ3を含む企業12社が、「ベストサービス」ではNTTコミュニケーションズ、ネットラーニング、スマイルワークス、wiwiw、日立製作所、日本ヒューレット・パッカードなどの企業が選出された。

 ベストブランドは、「認知度」「信頼性」「技術力」「実績」「提案力」「マーケティング力」といった項目にそれぞれの重み付けをして採点、総合スコア62.5以上の企業が選ばれた。今回より認知度の重みを3.5から2へと下げ、信頼性、技術力、実績の重みを1.5から2へと変更している。提案力とマーケティング力はこれまでと同様1となっている。

 その結果、これまで常にランクインしていたNECが総合スコア61.9で圏外となった。一方、旧基準では61.3で圏外となるはずのシスコシステムズが、新基準では62.8を獲得し12位にランクインした。また、日立製作所はベストブランドに選出された企業の中で、信頼性において唯一70ポイント以上を確保した。

 ベストサービスは、「クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス」「汎用業務系SaaS」「特定業種業務向けSaaS」「汎用情報系SaaS」「パブリッククラウド導入支援」「プライベートクラウド構築支援」「データセンター」の7分野でそれぞれのサービスを提供する企業が選ばれた。

 クラウド基盤サービスは、信頼性やセキュリティに対して求められる基準が高まっていることから評価項目を一部変更、「信頼性」にて「地理的に離れたデータセンターによる災害対策の提供」を基準に入れるなどして配点を高くした。この分野では、9つの評価項目中6項目で満点を獲得したNTTコミュニケーションズが前回よりスコアを2ポイントアップしてトップとなった。

 SaaSの3分野においても配点を一部変更、実績においてユーザー数が伸びていない場合は点数が低くなった。汎用業務系SaaSでは、スマイルワークスの「ClearWorks」が4回連続、日立製作所の「TWX-21」が7回連続、ネットスイートの「NetSuite」が8回連続選出されるなど、常連が強い結果となった。

 特定業種業務向けSaaSでは、「サービス内容」「契約」「保守サポート」の項目で満点となったwiwiwの育児支援SaaS「wiwiw」が5回連続選出されてトップとなった。TDCソフトウェアエンジニアリングのタレントマネジメントSaaS「HuTaCT」は初めて選出された。

 汎用情報系SaaSは、81サービスがエントリーする激戦分野だが、結果は大きな変化がなく、7回連続選出されているネットラーニングの「Multiverse」がトップ。一方で、日立製作所の情報共有基盤サービスは、第7回以来の選出となった。

 パブリッククラウド導入支援では、第6回以来の返り咲きとなった日立がトップに、プライベートクラウド導入支援では日本ヒューレット・パッカードがトップとなった。両分野共に複数の項目で満点を獲得する企業も多く、レベルの高い争いとなった。

 データセンターでは、「規模」「建物性能」「ネットワーク」「料金」といった項目で満点を獲得したNTTコミュニケーションズの「Nexcenter」がトップとなった。

 星野氏は、2014年7月の時点で「クラウドをすでに利用している」と回答した企業が34.2%となり、「具体的な利用予定がある」と回答した企業も含めると合計39.6%がすでにクラウドを選定していることを指摘、「システムの選定にあたってクラウドは無視できない存在だ」としている。特にパブリッククラウドの浸透が進んでおり、2008年にプライベートクラウドを構築した丸紅がアマゾンのパブリッククラウドへの移行を検討している事例を紹介。「オンプレミス型のプライベートクラウドは、自動化がきちんとできていないとコストメリットが出にくく、曲がり角にきている」と述べた。