総務省は2014年10月8日、2020年代に向けた情報通信政策を議論する「情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会 基本政策委員会」の第16回会合を開き、報告書案をとりまとめた。NTT東西のサービス卸を認め、NTTドコモに課せられた禁止行為規制も一部を緩和。MVNO(仮想移動体通信事業者)の参入促進なども通じて異業種の様々なプレーヤーを呼び込むことにより、新事業や新サービスの創出につなげていく方針を改めて示した。

 通信事業者間で最大の争点となっていたサービス卸については、「多様な新サービスの創出や光回線の利用率の向上、日本の経済成長への寄与も期待できる新たな取り組み」と評価。適正性や公平性、透明性の確保が課題となるが、サービス卸は指定電気通信役務に該当するため、業務改善命令や禁止行為規制といった現行の規制の枠組みで一定の程度は確保できるとした。

 とはいえ、NTT東西は現状、サービス卸の提供条件や料金を公表しておらず、競合他社からは疑念の声が出ている。NTT東西は全面否定するが、「NTTグループ、特にNTTドコモとの取り引きを優遇するのではないか」というものだ。基本政策委員会の前回(第15回)会合でも、「ボトルネック設備を保有するドミナント事業者であることから、決定事項や契約内容を一般に公開すべき」との意見が一部の構成員から出ていた。

 報告書案ではこれらの点を踏まえ、「総務省が提供条件や料金の適正性と公平性を十分に確保するとともに、外部による検証の可能性も含め、一定の透明性が確保される仕組みの導入を検討することが適当」とした。ただ、具体的な方法までは言及しておらず、競合他社の間には依然として不満がくすぶっている。総務省はかつて、MVNOの参入促進と事業予見性を高めるため、携帯電話各社に「卸標準プラン」の公表を要請したことがあった。サービス卸は状況が異なるとしても、現在のように「完全な非公開」の状態ではかえって疑念や不満が増すだけである。最終的な判断を委ねられた総務省には、さらなる透明性の確保に向け、もう一歩踏み込んだ仕組みの導入が求められそうだ。

 一方、報告書案では、光回線の「分岐単位接続料」(1分岐貸し)の導入についても、改めて検討する方針を決めた。1分岐貸しはこれまで何度も導入が見送られてきた経緯があり、中間整理でもほとんど言及がなかったが、前回会合で急浮上。光配線区間の見直しやエントリーメニューの導入といったこれまでの取り組みの評価に加え、NTT東西の設備投資インセンティブを損なわない形での導入を目指す。総務省の接続政策委員会で速やかに検討を始めるという。