日経BPイノベーションICT研究所/日経コンピュータ主催の「日経BPアジアICTカンファレンス2014 in Bangkok」が、2014年9月19日に開催された。同カンファレンスは、ASEAN(東南アジア諸国連合)に進出している日系企業を対象に、最新の現地動向およびICTソリューションを紹介するものである。
バンコクで開催された今回のカンファレンスは、ゲスト講師による講演およびICTベンダーによるソリューション講演、合わせて7個のセッションが用意された。それぞれ、テーマやプレゼンスタイルが異なる、多彩な内容となった。
EUとは異なるAECの統合プロセス
冒頭の基調講演に登壇したのは、タイ政府国家経済社会開発委員会政策顧問を務める松島大輔氏(写真1)。話題の中心は、「新政権の経済政策」と「ASEAN経済共同体(AEC)の展望」である。新政権の経済政策を語るうえで懸念されるのが政治的な混乱だが、最新情勢について松島氏は「収束に向かっている」とし、「新政権は、5月以降に8兆円の経済政策を打ち出している」「経済的な停滞は、政治混乱のためだけではない。ここ数年の補助金による販売促進の反動もある」と報告した。
新政権の方向性に関して、松島氏は三つのポイントがあるとした。
第1のポイントは、親日的政策の維持。政権発足後、新政権は早い時期から日系企業との接触を試みていたという。
第2のポイントは、投資委員会(BOI)の首相府への移管による、投資政策の実行意欲。BOIの方針は、成長産業をできるだけ促進することだとし、製造業を高度化するICTもポイントだとした。
第3のポイントは、AECへの適合姿勢。既に、タイのインフラと、周辺国の低賃金労働の両方を享受できる国境貿易が伸びている現状を紹介した。
AECの展望について松島氏は「欧州連合(EU)とは統合のスタイルが異なる」と切り出した。EUとは違って、現状追認型の統合であるといい、その現状を支える形で政府が企業誘致などに動いている。それが、事実上の経済統合を生んでいくというのだ。
AECのポイントの一つとして挙げたのが、製造業を支援するサービスの自由化。自国の産業を守る保護主義がある一方で、製造業を支援するサービスは自由化しようという議論が始まっているのだといい、これがビジネスチャンスになりそうだとみる。
ASEANにおける今後のタイの役割の一例として松島氏が挙げたのが、ミャンマー南部の港湾であるダウェイ地区の総合開発。同開発により、タイの製造業とインドの情報通信、広くはASEANと南アジアが結びつくことになるだろうとした。