写真1●「みらい翻訳」の設立に合意した3社の代表者。左からシストランインターナショナル 会長のジ・ルーカス氏、NTTドコモ 執行役員の栄藤稔氏、フュートレック 代表取締役社長の藤木英幸氏
写真1●「みらい翻訳」の設立に合意した3社の代表者。左からシストランインターナショナル 会長のジ・ルーカス氏、NTTドコモ 執行役員の栄藤稔氏、フュートレック 代表取締役社長の藤木英幸氏
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写真2●3社の技術および人材に加え、NTTとNICTの技術を活用する
写真2●3社の技術および人材に加え、NTTとNICTの技術を活用する
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写真3●新会社はB2BとB2B2Cの形態を想定する
写真3●新会社はB2BとB2B2Cの形態を想定する
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 NTTドコモ、韓国シストランインターナショナル、フュートレックの3社は2014年9月29日、機械翻訳技術を開発する合弁会社「みらい翻訳」を設立する契約を締結した(写真1)。10月下旬に新会社を設立し、3社が技術者を派遣。日本語と英語・中国語・韓国語などの機械翻訳技術を開発・販売していく。

 みらい翻訳は基盤として、シストランの翻訳エンジンと、情報通信研究機構(NICT)の翻訳エンジンを用いる。ここにNTTの言語処理技術や、フュートレックやNTTドコモの自然言語処理関連事業の経験、各社が持ち寄る大量の「コーパス」を組み合わせることで、世界最高水準の機械翻訳精度を目指す(写真2)。文書の翻訳や会話時の同時通訳、標識やニュースのリアルタイム翻訳などを可能にする。

 新会社の代表取締役社長に就任予定のNTTドコモ 執行役員 R&D戦略部長の栄藤稔氏は同日に開催された記者説明会で、「日本語と英語との間の機械翻訳精度は、現在は『TOEIC』で600点程度とされる。2016年度までに700点以上の水準を達成したい」とした。まずは日本語と英語・中国語・韓国語の機械翻訳エンジン開発を進め、将来的にはベトナム語・タイ語・インドネシア語なども対象とする予定。「東京オリンピックが開催される2020年には、英語・中国語・韓国語との機械翻訳をストレスなく使えるようにしたい」(栄藤氏)。

 顧客としては、(1)社内文書や会話の翻訳などを求める企業、(2)消費者向けに翻訳関連サービスを提供したい企業、を想定する(写真3)。具体的な課金方法や時期は未定だが、(1)の顧客には医療や法律などの分野や用途に合わせて翻訳エンジンを最適化した上で提供し、(2)の顧客には標準的なAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を提供する形が中心となる見込みだ。

 栄藤氏は、日本における2014年の翻訳・通訳市場規模が2500億円で、うち12億円が機械翻訳であると説明した。「まずは機械翻訳の市場が新会社のターゲットになるが、翻訳精度が上がってくれば人手で翻訳している領域にも進出できる。さらに、機械翻訳の精度向上によって開拓される新しい市場も見えてくるだろう」(同氏)。

 設立する合弁会社のみらい翻訳は、資本金が9億9000万円。出資比率はNTTドコモが51.0%、シストランが30.0%、フュートレックが19.0%である。