写真1●携帯大手3社が出席した総務省のICTサービス安心・安全研究会第4回会合の様子
写真1●携帯大手3社が出席した総務省のICTサービス安心・安全研究会第4回会合の様子
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 総務省のICTサービス安心・安全研究会は2014年9月25日、第4回会合を開催した(写真1)。

 研究会の下部組織にあたる、消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(ワーキンググループ)では、9月18日に開催した会合で、WGとしての報告書案を取りまとめた。ここでは懸案となっていた「販売形態によらないクーリングオフの導入」について、販売代理店の経営への配慮から端末を除外する結論を下した(関連記事:店頭販売のクーリングオフ対象から端末を除外、名称変更へ、総務省WGが報告書案)。

 親会にあたるICTサービス安心・安全研究会では今回、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの携帯3社が出席。iPhone 6の発売に伴って加熱する端末の下取りキャンペーンについて、構成員から質問攻めにあうシーンが目立った。

「下取りキャンペーンは単なる値引きの建前では」という疑念も

 研究会が今回、携帯3社の同席を求めた理由は、「報告書案の整合性を取るため」(研究会の座長を務める明治大学法学部の新美育文教授)。中間取りまとめでは「販売形態によらないクーリングオフの導入」としていたものの、携帯各社や販売代理店から端末返品リスクや代理店ビジネスへの影響が多き過ぎるという指摘が相次ぎ、報告書案では端末をクーリングオフの対象から除外した。

 しかしその前後、iPhone 6の発売開始に伴って携帯各社は、他社端末も含めてユーザーが利用中の端末を高額で下取りするキャンペーンを開始した。端末の返品リスクが大きいということから、端末をクーリングオフ対象から除外したのに、中古端末を高額で下取りするということは、どのように報告書案の内容と整合性を取ればよいのかという理由からだ。また構成員の質問の端々からは、「下取りは単なる建前上の名目に過ぎず、単なる値引きのための言い訳になっているのではないか」との疑念も感じる。

 このような座長や構成員の質問に対し、NTTドコモの阿佐美弘恭 取締役常務執行役員経営企画部長は「下取りした端末は、部品レベルでリサイクルしたり、端末を売却するなど市場が存在している。下取りキャンペーンは単なる値引きではなく、下取り価格をポイント還元してもバランスが取れるレベルで進めている。ビジネスとしてマイナスになっているものではない」とした。

 KDDIの藤田元 理事 渉外・広報本部長は、同社の下取りプログラムについて「もともとは2013年6月から自社ユーザーを対象に機種変更の負担を軽減するために開始した」と説明。その後、iPhone 6の発売に伴ってNTTドコモが、他社の端末の買い取りに限定したキャンペーンを開始したため、他社端末の買い取りに広げた経緯を述べた。藤田本部長は「下取りプログラムは(端末や部材の売却による)価値があるからやっているが、競争環境上やらざるを得ないのも事実」とも打ち明けた。

 ソフトバンクモバイルの徳永順二常務執行役員財務副統括担当兼渉外本部本部長も、「もともと下取りプログラムは自社ユーザー向けに提供していたが、NTTドコモが他社端末の下取りを開始したため、競争上、他社端末の買い取りも始めた。本当はやりたくないが、やらざるを得ない。下取りした端末は、海外を含めて売却している。部材の再利用はあまりない」とした。

 また、仮に端末まで含めてクーリングオフした場合、このような中古端末市場によってある程度、損失を補えるのではという趣旨の質問もあった。この点について、NTTドコモの阿佐美部長は「代理店は端末を卸価格で購入している。返品された端末は開封されれば即中古となり、市場価格はがくんと落ちる。これを中古市場で売却しても、ビジネスとしては成り立たない」とかわした。

 以上のようなやり取りを経て、座長の新美教授は「iPhone 6の下取りキャンペーンが加熱する理由は、(事業者の乗り換えに伴って)端末が返品されてしまうことに起因する。SIMロック解除を推進すれば、利用者は端末を返品せず、(SIMを入れ替えて)端末を使い続けるだろう。やはり携帯各社にはSIMロック解除を強く押し進めてほしい」と結論付けた。SIMロック解除が進めば、先のWGの会合で出た、「通信サービスだけクーリングオフ(初期契約解除)しても、高額な端末の残債が残り、新たなトラブルの要因になる」という課題も、ある程度、解消できる。

 研究会では、報告書案に上記のようなSIMロック解除を強く進める方針を追記した上で、別途総務省で議論が進む2020-ICT基盤政策特別部会 基本政策委員会へ報告する。さらに報告書案に対する意見募集も実施するという。

[会議資料:ICTサービス安心・安全研究会]