写真1●ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(ワーキンググループ)第11回会合の様子
写真1●ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(ワーキンググループ)第11回会合の様子
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 総務省のICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(ワーキンググループ)は2014年9月18日、第11回会合を開催した(写真1)。

 今回は、前回会合における販売代理店各社などへのヒアリングを踏まえ(関連記事:販売代理店各社がクーリングオフ適用除外に向け必死の陳情、総務省の消費者WG)、WGとしての報告書案を取りまとめた。

 中間取りまとめから大きく変更、加筆されたのは以下の2点である。まず懸案となっていた「販売形態によらないクーリングオフの導入」について、販売代理店などへの経営への配慮から、店頭販売における端末はSIMロックの有無にかかわらず、クーリングオフの対象から除外するとした。また訪問販売などにおける「クーリングオフ」と、今回の電気通信分野における「クーリングオフ」は内容が異なる部分が多いことから、これまで「クーリングオフ」としてきた名称を「初期契約解除ルール」と改めることにした。

契約解除後のSIMロック端末の問題指摘が相次ぐ

 通信事業者や販売代理店に対し極めて厳しい条件を突きつけた同WGの中間取りまとめから(関連記事:クーリングオフ、SIMロック解除義務化の波紋、そして浮かび上がる疑問)、一歩、後退とも、現実的な落としどころを探ったとも言える今回の報告書案について、構成員の間から異論が相次いだ。

 例えば構成員である全国地域婦人団体連絡協議会の長田三紀事務局次長は「初期契約解除ルールから端末を除外した場合、SIMロック端末がほとんどの現状を考えると、通信サービスを契約解除しても高額な端末(の割賦残債)が残り、ユーザーの負担は大きい。キャリアにSIMロック解除を進めることを強くお願いしたい」と指摘。同じく構成員である齋藤雅弘弁護士も、「初期契約解除ルールから端末を除外することは賛成できない。通信サービスの解除後に端末の割賦残債がまとめて来るなど新たなトラブルを増加させることが目に見えている。キャリア、代理店には自主的に端末の契約解除ルールを定めてほしい」と、端末を契約解除の対象から外すことによる新たな問題を強調した。

 構成員の間の意見が、上記のような端末も初期契約解除ルールに含めるべきという意見、報告書案の通り端末を除外してもよいという意見、議論自体をもっと継続すべきという意見に分かれる中、主査代理である中央大学総合政策学部の平野晋教授が以下のような解決案を提示した。今回、初期契約解除ルールから端末を除外することはキャリアや販売代理店に対する”執行猶予”であるとし、キャリアや代理店各社は自社や業界団体で把握する苦情件数や内容を、全国消費生活保護ネットワークシステム(PIO-NET)以上の頻度や深さで報告する。苦情が減らなければ、執行猶予を外し、端末も初期契約解除ルールに含める、という考え方だ。

 前回会合では、ヒアリング対象となった販売代理店各社や電気通信事業者協会(TCA)が、業界団体としてユーザーからの苦情を低減させる取り組みを進めることを提示した。このような業界による自浄努力を加味したとも言える。

 議論はおおむね上記の考え方に収束。基本的には報告書案の通り、端末を初期契約解除ルールから除外する方向に固まった。

 今後は、上記のような考え方を追記した上、親会にあたるICTサービス安心・安全研究会が9月25日に開催する会合にてWGの報告書として提出する。その後、パブコメや2020-ICT基盤政策特別部会への最終取りまとめを経て、実際の制度整備が進められる見込みだ。

[会議資料:消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG]