日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2014年9月4日と5日、イベント「JUASスクエア2014」を開催した。先端技術を採用したユーザー事例の発表やIT部門の将来像を考えるディスカッションテーブルなど、約40のセミナーが設けられた。

 初日の基調対談では、モルガン・スタンレーMUFG証券のマネージングディレクター/チーフエコノミストのロバート・アラン・フェルドマン氏と、Change.org日本代表のハリス鈴木絵美氏が登壇。「シフト!世界を変えるデジタル化とニッポンの進む道~明るい未来のための、デジタルイノベーションとは」と題して、デジタル化による社会の変化について意見を交わした。

 モルガン・スタンレーMUFG証券のフェルドマン氏は、日本における少子高齢化の問題を指摘。労働人口の減少に対応するには、「デジタルイノベーションによって一人ひとりの労働生産性を向上させることが必須」と力説した。

 その契機としてフェルドマン氏は、オリンピック/パラリンピックを挙げた。1960年の東京オリンピックでは新幹線が生まれ、国内経済の発展に寄与した。2020年の東京オリンピック/パラリンピックでも、様々な技術革新が生まれる可能性を示唆した。

ソーシャルメディアが社会を変える

 Change.orgのハリス氏は、ソーシャルメディア上でこのところ話題になっていた「ALSアイスバケツチャレンジ」をデジタルイノベーションの一例として取り上げた。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者とその支援団体に対する募金活動である。ハリス氏は、「ソーシャルメディアが社会や政治を変える可能性を象徴している」と語った。

 この募金活動では、賛同する人が自らの行動をソーシャルメディアに載せて情報を伝播させた。しかも、テキストではなく動画を通して伝播していった。ハリス氏は「クラウドコンピューティングなどの技術の進歩が、こうしたことが可能になった背景にある」と指摘した。

 ハリス氏が運営しているChange.orgは、ソーシャルメディア上で署名を集めるサービスだ。現在、18カ国の言語に対応しており、全世界で約7000万人が利用しているという。技術の進歩により誰もが手軽に発言できるようになることで、「日本のような上下関係の強い文化がある国でも、一人の発言が大きく影響を及ぼせるようになる」と語った。