デジタル教科書教材協議会(DiTT)は2014年9月3日、「小学生に反転授業は可能か?」と題したシンポジウムを開催した。2014年度から市内の小学校で反転授業を開始した佐賀県武雄市と、2012年から取り組んでいる宮城県の小学校での事例が発表された。児童の意欲や理解度が高まるといった効果が明かされるとともに、今後に向けた課題の指摘もあった。

 反転授業とは、動画教材などを利用して自宅で知識の習得を済ませ、授業では応用課題やディスカッションなどに取り組む授業スタイルのこと(関連記事:講義が宿題になる――「反転授業」)。国内でも、関心が高まりつつある。

 まず基調講演に登壇したのは、武雄市立武内小学校校長兼武雄市教育監の代田昭久氏(写真1)。同市では2014年度から、市内の全小学校で「スマイル学習」と呼ぶ独自の反転授業を開始した。児童生徒の主体的な学習を促進する、教員が児童生徒の理解度を把握してから授業に臨めるようにする、協働的な問題解決能力を育成する、といった狙いがある。

写真1●武雄市立武内小学校校長兼武雄市教育監の代田昭久氏
写真1●武雄市立武内小学校校長兼武雄市教育監の代田昭久氏
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 2014年5月から7月には、3年生以上の算数19単元46コマ、4年生以上の理科10単元24コマでスマイル学習を実施。武雄市全体で、延べ600回ほどの反転授業が行われたという。

 授業後には毎回、児童に対して「授業はよくわかりましたか」などのアンケートを実施した。その結果、「よくわかった」「どちらかと言えばよくわかった」の合計が94%に達し、「よくわからなかった」「どちらかと言えばよくわからなかった」は6%にとどまった(写真2)。一方、文部科学省が実施した2014年度全国学習状況調査(6年生算数)の同様の設問では、「よくわからない」「どちらかと言えばよくわからない」の合計が20%にのぼる。代田氏は「スマイル学習だと、“分からない”という子が圧倒的に少ない」と効果を実感する。基本的な事柄を理解した上で授業に臨めることなどから、スマイル学習は普段の授業よりも楽しみだと答える児童も多いという。

写真2●「スマイル学習」の授業後に実施した児童へのアンケート結果
写真2●「スマイル学習」の授業後に実施した児童へのアンケート結果
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