写真●佐賀県Do-IT!プロジェクト責任者の工藤卓哉氏
写真●佐賀県Do-IT!プロジェクト責任者の工藤卓哉氏
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 8月25、26日に佐賀市で開催された都道府県CIOフォーラム第12回年次総会で、佐賀県Do-IT!プロジェクト責任者の工藤卓哉氏(アクセンチュア アナリティクス 日本統括マネジングディレクター)が、行政の現場におけるデータサイエンスの活用について講演した(写真)。

 工藤氏が佐賀県のプロジェクト責任者の就任してまだ1カ月ということで、以前米国ニューヨーク市の統計ディレクターを務めていた際の経験をベースに、警察と学校などにおけるデータ活用について解説した。

 まず、ニューヨーク市警察局のデータ活用事例を紹介。捜査情報のデジタル化を進めて蓄積し、それを分析することによって大きな成果を挙げたという。具体的には、犯罪の可視化と犯罪発生パターンの予測で、下記のような機能の提供を実現した。

  • 犯罪ピンマップ:犯罪をリアルタイムに可視化することで捜査員を最適配置
  • 被疑者抽出:市内に配置した6000台のカメラで被疑者をパターン認識して追跡
  • 追尾システム:16億件の自動車ライセンス(ナンバープレート)情報を蓄積して自動追尾

 こうした機能をベースに、現場にいる警察官へのリアルタイム情報提供なども実現し、1991年と比較して2013年の殺人発生件数を85%も減少させることに成功した。「三地点の観測地で感知した銃の音声データを分析して、どこで発砲したかを割り出すこともできる」(工藤氏)。

 教育関連では、学業成果・成長度・学校環境の集計とレポーティング、保護者・生徒・教員へ学習環境に関する聞き取り調査、外部の専門評価員の訪問調査による実装状況評価のデータを基に、高校退学率を4年間で20.4%から10.6%へ減少させることに成功した例を解説した。

 今回の就任は、佐賀県がスカウトして実現した。工藤氏は声がかかったときに、迷わず引き受けたという。「知事やCIOに会って、本気度合いは伝わってきた。条件うんぬんではなく、気を引き締めて仕事をしたい」(工藤氏)。佐賀県庁にはアクセンチュアの別の社員が常駐し、工藤氏自身は月に2~3日県庁で働くという形態を取る。まずは「データを用いた県の課題改善とオープンデータの推進に取り組む」(工藤氏)という。

 工藤氏は、具体的に最初に手掛ける事項として、救急医療を含めた医療政策を挙げた。佐賀県では、医療機関と迅速に連絡を取って可能な限り早く患者を搬送するために、iPadを救急車に搭載している。このやり取りの結果蓄積された、救急搬送に関する詳細なデジタルデータが3年分あり、この分析を進めている。「データを可視化するだけで、大きく貢献できると考えている。加えて、現場に使ってもらえる有用なアプリケーションを作りたい」と工藤氏は抱負を語った。