写真●佐賀県の古川康知事
写真●佐賀県の古川康知事
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 8月25、26日の2日間佐賀市で行われている都道府県CIOフォーラム第12回年次総会で、佐賀県知事の古川康氏が、同県のICT関連政策について講演した。

 まず古川氏は、全国の都道府県で最初に佐賀県が、ネットを通じてYoutubeで閲覧できる動画「恋するフォーチュンクッキー 佐賀県庁Ver.」を作成し、2013年9月9日にAKB48の公式チャンネルで公開した件に触れた。内容は、県庁の職員が現在手掛けている施策や県産品、観光地について、踊りながら紹介するもの。同県が取り組む様々な施策や事業内容を、これまで届きにくかった層にも広く届ける知らせる狙いがある。

 古川氏はこれに関連して、都道府県の広報のやり方に変化が必要なのではないかと指摘した。「これまでの伝統的な県庁の広報の方法では、多くの人にリーチできていないのではないか。広報誌を常に読んでいる人がそう大勢いるとは思えないし、最近では新聞やテレビを見ている人さえかなり限られていると感じる。そうした中で、どうしたら広く広報ができるかを考えた末に、この手段を試してみた」(古川氏)。

ICTで職員の負担を軽減したい

 続いて、同県が他都道府県に先駆けて実施した、他のICT政策についても解説した。いずれもICTを活用して、職員の負担を軽減しようとするものだ。

 まず、「99さがネット」。県内の病院・診療所、消防機関などをインターネットで結び、 医療機関などの相互連携に活用するネットワークだ。その一環として、救急車にiPadを搭載し、救急患者の受け入れ可能な病院を検索できるようにした。「受け入れ可能な病院を探すために、以前はわざわざ電話をして探していたが、そうした労力をかけずに済むようになった」(古川氏)。現在、こうしたシステム導入は他の都道府県にも広がっており、8団体が導入済みで、27団体が検討中だという。

 さらに、県立高校へ入学する全生徒にタブレットを配布した件にも触れた。「佐賀県教育委員会を通じて、県立学校に今年4月に入学した生徒全員に配った。再来年で全員に行き渡ることになる」(古川氏)。目的は、生徒の学習能率向上と同時に、ICTを活用して教師側の校務負担を軽減することにもあるという。

 「どこでもオフィス」も、家庭や出先など様々な場所で働ける環境を作ることが目的で、子供や老人の面倒を見なければならない職員や通勤時間の長い職員が、自宅やその近くのサテライトオフィスから職務をこなせるようになる。「今年10月から、県庁全職員3000人がテレワーク可能になる」(古川氏)。実は古川氏も、実証実験を兼ねて、週に一度はテレワークをするよう努めているという。

 古川氏は、ICT政策を進めて改めて気づいたのが、「紙をなくさないとどうしようもない」ということだと話す。「書類を抱えないと安心できない人が県庁には多い。これをできるだけ減らすために、私のところに紙の資料を持ってくることを禁止している」(古川氏)という。

 古川氏は最後に、「これからも佐賀のコンパクトさを生かして、他の都道府県にはできない、エッジの利いた取り組みを行って行きたい」と語り、講演を終えた。