写真1●警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課の小竹一則・警視
写真1●警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課の小竹一則・警視
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 シマンテックは2014年7月31日、日本のインターネットバンキングで発生している不正送金事件に関する説明会を開催した。警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課の小竹一則・警視(写真1)が講演。「日本のネットバンキングは今、非常に厳しい状況にある」と述べて危機感を示した。

 警察庁の調べによると、ネットバンキングに関わる不正送金事犯は2013年1年間に32金融機関、1315件が発生した。被害総額は約14億600万円で、過去最多となった。2014年は5月9日時点で既に58金融機関で873件、約14億1700万円の被害が発生しており、年間被害額が前年を大きく上回るのは確実な情勢だ。

 被害の実態としては、法人の口座が狙われる傾向が強まっている。2013年は被害額全体で法人が占める割合は6.9%だったが、2014年は33.9%まで高まった。

 全国の警察は2014年1月から5月9日までに47事件74人を検挙した。このうち過半数の41人が中国人だとしている。検挙したのは「出し子(だしこ)」と呼ばれる人物が多い。出し子とは、ネットバンキング上で詐取した金銭をATMで現金として引き出し、犯行グループに渡す役割を担う者を指す。出し子による不正出金の手口は、件数ベースで全体の71.3%を占める。