図●厚生労働省が発表したSE多重派遣を巡る違法行為の構図
図●厚生労働省が発表したSE多重派遣を巡る違法行為の構図
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 厚生労働省東京労働局と同省神奈川労働局は2014年7月28日、システムエンジニア(SE)の派遣を手がける事業主3社に対し、労働者派遣法に違反したとして行政処分を出した。3社は同法が禁じる「多重派遣」に関与していたとし、派遣事業の一時停止や事業改善を命じた。

 行政処分を受けたのはRJC(東京都千代田区)とスライムスタイル(横浜市)、ケイズ・ソフトウェア(東京都品川区)の3社。RJCは原因究明や再発防止のための措置を講ずることなどを命じる「改善命令」を受けた。スライムスタイルとケイズ・ソフトウェアの2社は改善命令に加えて、7月29日から8月11日までの間、労働者派遣事業を停止することを命じる「停止命令」を受けた。

 行政処分の理由は、ある「IT企業」に対して3社がシステムエンジニアを多重派遣する形で労働者をやり繰りしたことだ()。2012年から2013年にかけて、RJCが雇用する労働者の延べ673人日(実労働者数2人)と、スライムスタイルがケイズ・ソフトウェアを経由して供給していた労働者延べ1700人日超(実労働者数6人)が、違法だとされた。

 RJCはスライムスタイルに対して、「業務委託と称する契約」でSEの派遣を行っていた。スライムスタイルはそのSEをケイズ・ソフトウェアに「出向と称する契約」で労働者供給。ケイズ・ソフトウェアはIT企業に対して「労働者派遣と称する契約」でSEを派遣していた。厚生労働省は、こうした一連の流れは労働者派遣法が禁じる「多重派遣」に当たると判断し、行政処分を出した。

 同省派遣・有期労働対策部需給調整事業課の説明によれば、労働者派遣法に基づく行政処分は全国で年間20~30件程度で推移している。派遣先の業界を分類した形での統計は取っていないが、IT業界に関連する行政処分も年に数件あるという。

 同省は違反発覚の経緯については「公表できない」とする。一般には、全国の労働局が実施する派遣事業主に対する定期的な指導で違反が判明したり、労働者側からの情報提供から違反判明につながったりするケースがあるという。

 SEの派遣を巡って、厚生労働省は大幅な制度改正を目指していた(関連記事:特定労働者派遣廃止の衝撃)。2014年6月に閉会した通常国会に労働者派遣法改正案を提出していたが、法案の記載にミスが見つかったため、成立しなかった経緯がある(関連記事:改正労働者派遣法、法案にミスがあり通常国会での成立は見送りに)。今回の行政処分は現行法に基づく処分である。

厚生労働省の発表資料