欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)が下した「忘れられる権利(right to be forgotten)」を支持する裁決に従って米Googleが検索結果から除外した記事リンクは10万件以上とみられる。米Wall Street Journalが関係者から得た情報として現地時間2014年7月24日に報じた。

 Googleは同日ベルギーのブリュッセルで欧州のプライバシー関連当局者と会合し、査定した削除依頼リンクの50%以上を削除したことを報告したという。

 Googleは5月に、スペインの男性が同社を相手取って起こしていた裁判で「検索エンジンは、個人情報を含むWebページへのリンクを検索結果から削除する義務がある」とする判決を受けた。同月中にユーザーがリンク削除を求めるためのツールを設置し、6月末には削除依頼に基づいた作業を開始。7月2日に英Guardianや英BBCなどの複数の大手ニュースメディアにリンク削除の通知を送信した(関連記事:Google、「忘れられる権利」に応じた措置で英メディアの記事を削除)。

 今回の会合に同席した人物の情報によれば、Googleはこれまで9万1000人から削除依頼を受け取っている。対象のリンクは32万8000に上るが、まだすべて査定したわけではない。しかし50%以上という割合から、「表現の自由への影響を懸念する声がいっそう高まる可能性がある」と同メディアは指摘している。人権擁護団体などは、リンク削除はWeb上の広範な検閲につながるおそれがあると批判している。

 7月18日までにGoogleに寄せられた削除依頼は、フランスからが1万7500件、ドイツが1万6500件、英国が1万2000件、スペインが8000件、イタリアが7500件、オランダが5500件という。

 また、リンク削除がEU向けの検索エンジンに限られることについて、欧州当局者がグローバルな適用をGoogleに迫ったと、英Reutersが伝えている。リンク削除措置が実施されても、例えば米国版Google検索などではこれまで通りそのリンクは検索結果に表示される。当局者は「EU向けに限定していることは、ECJの裁定の目的を事実上くじくものだ」と述べている。

 なお、米Microsoftも検索エンジン「Bing」において、Googleと同様にリンク削除を申し込むためのツールを今月設置ししている(関連記事:Microsoftも「忘れられる権利」の裁定に基づく削除依頼ツールを設置)。