「私たちは総合技術サービス産業で、決して鉄道業ではない。鉄道業と言った瞬間に衰退が始まる」と、刺激的な会社紹介をしたのは、東日本旅客鉄道(JR東日本)で取締役副会長を務める小縣方樹氏だ(写真1)。2014年7月17日、18日に東京・渋谷ヒカリエで開催されたFeliCa/NFC関連のイベント「FeliCa Connect 2014」の基調講演での一コマである。「社会インフラとしての鉄道およびSuicaの持続的革新によるQoL革命」と題した講演で、小縣氏はJR東日本の立脚点を示した。

写真1●Suicaは鉄道と並ぶインフラになると力説するJR東日本 取締役副会長の小縣方樹氏
写真1●Suicaは鉄道と並ぶインフラになると力説するJR東日本 取締役副会長の小縣方樹氏
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 「総合技術サービス産業」について、小縣氏はこう説明する。「総合とは、鉄道路線から車両まで上下一体でインフラを保有することを示す。技術では、鉄道のインフラ運営のための運用、管理、建設までを含めた全ての技術を持っている。そしてJR東日本は利用者の生活の質、すなわちQoL(Quality of Life)の向上のための価値をサービスをとして提供することを目的に掲げている。狭義の社会インフラである鉄道サービスを提供する企業ではなく、利用者のQoLを高める様々なサービスを提供する広義のインフラ企業として、総合技術サービス産業と位置付けている」。

 そうした中で小縣氏は、「今やSuicaやFeliCaも社会インフラと言われるようになった」と、JR東日本が提供するICカード事業を、利用者のQoLを向上させるための1つの社会インフラとして位置付けていることをアピールした。

民間活力が成功に導いたSuica、FeliCaサービス

 小縣氏は世界にJR東日本のインフラを売り込んできた経験から、「日本の利用者は、鉄道とSuicaを水や空気のように思っている。しかし、海外からは世界でもまれに見るインフラの国に見えている。交通ストレスから利用者が開放されるには、SuicaやPASMO以外に答えはない。日本がインフラでは圧倒的に強い」と、日本の状況を分析する。