「NTTドコモが掲げる“スマートライフのパートナーへ”というコンセプトの中で、おサイフケータイはレコメンドや課金、決済分野のサービスプラットフォームとしての役割を担っていく」。2014年7月17日、18日に東京・渋谷ヒカリエで開催されたFeliCa/NFC関連のイベント「FeliCa Connect 2014」の基調講演で、NTTドコモ スマートライフ推進部 ビジネス基盤推進室 ビジネス戦略担当部長の江藤俊弘氏はこう語った(写真1)。おサイフケータイを、1つのサービスではなく、将来のサービスプラットフォームとして位置付けているというのだ。

写真1●NTTドコモ スマートライフ推進部 ビジネス基盤推進室 ビジネス戦略担当部長の江藤俊弘氏
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写真1●NTTドコモ スマートライフ推進部 ビジネス基盤推進室 ビジネス戦略担当部長の江藤俊弘氏

 NTTドコモは、6月に開始した「音声定額、パケットシェア」という新料金プランが好調で、7月5日には500万契約を突破。新しい音声通話の方式「VoLTE」により、クリアな音声通話の新しいユーザー体験を提供する。さらに、LTEの次世代の通信方式であるLTE-Advancedの導入、2020年の実用化をメドに最大10Gビット/秒といった超高速通信を実現する5G(第5世代移動体通信)の研究開発を進めるなど、本業の通信ネットワーク事業でのアドバンテージを築こうとしている。

リアルの生活とネットをつなぐおサイフケータイ

 一方、通信事業を支える新領域のサービス拡充も進める。ユーザーの生活の質を高める「スマートライフ」の実現へ向けた施策だ。江藤氏は「ドコモは新領域として、お出かけ、学び、環境・エコ、エンターテインメント、健康、買い物、コミュニケーション、安心・安全――の主要8領域を定めた。この8分野でユーザーの生活の質を高めるサービスを提供し、スマートライフのパートナーとなることを目標としている」と語る(写真2)。例えば「学び」では、料理教室を運営するABCクッキングスタジオとの資本・業務提携をしているほか、「環境・エコ」ではコミュニティサイクル事業を各地で展開、「健康」分野では、オムロンヘルスケアと合弁会社を設立するなど、サービスの場をリアルの世界に広げているのだ。

写真2●8分野の新事業領域で「スマートライフ」の実現を目指すドコモは、おサイフケータイをリアルとネットの連携のインフラとして活用する
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写真2●8分野の新事業領域で「スマートライフ」の実現を目指すドコモは、おサイフケータイをリアルとネットの連携のインフラとして活用する

 江藤氏は、「本当はコミュニケーションや個々の分野で圧倒的な支持を得たいのだけれど、最近はLINEにやられっぱなし。LINEの上場には、戦々恐々としている」と会場の笑いを取りながら、「スマートライフの中で、おサイフケータイが基盤となる。レコメンドや課金・決済の分野でおサイフケータイが、サービスプラットフォームとして使われることを目指している。一方で、ユーザー目線では、おサイフケータイはリアルとネットの重要な接点になる」と指摘。リアルとネットを融合させたサービス設計の中で、ユーザーとの具体的な接点を作るのがおサイフケータイだという考え方を示した。

 ドコモの2013年度売り上げは、約4兆5000億円。2015年には1兆円の売り上げを新事業領域から得ることを目指している。こうした目標の達成を、おサイフケータイによるリアルとネットの融合が下支えするという構想が見えてくる。