米Microsoftは同社の検索エンジン「Bing」において、「忘れられる権利(right to be forgotten)」に基づくリンク削除を申し込むためのツールを設置した。ユーザーはBingの検索結果から不適切あるいは不当な個人情報を削除するよう求めることができる。

 同ツールは欧州在住のユーザーに向けたもので、複数の海外メディア(米Wall Street Journal英Reuters)によれば現地時間2014年7月16日に提供が開始された。欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)が米Googleに対して下した、忘れられる権利を支持する判決を考慮した行動だという。

 Googleは今年5月に、スペインの男性が同社を相手取って起こした裁判で、「検索エンジンプロバイダーは、一定の条件のもと、個人情報を含むWebページへのリンクを検索結果から削除する義務がある」とする判決を受けた(関連記事:Googleは個人情報へのリンクを削除する責任あり、欧州司法裁の判決)。これに応じてGoogleは、ユーザーが情報削除を依頼するツールを5月末までに設置。6月末には削除依頼に基づいた作業を開始し、7月2日に英Guardianや英BBCなど複数の大手ニュースメディアにリンク削除を通知した(関連記事:Google、「忘れられる権利」に応じた措置で英メディアの記事を削除)。

 Microsoftが設置したツールではGoogleのそれと同様に、リンク削除を求めるユーザーは国名、氏名、電子メールアドレス、対象記事のURL、理由など必要事項を入力し、身分証明書類のコピーなどを添付する。

 Microsoftは申請の内容や他のソースの情報をもとに、個人のプライバシーの権利と、公共の表現の自由および情報入手の自由の保障とのバランスを考慮し、欧州の法律に従って削除するかどうか判断するとしている。

 なおMicrosoftは、「ECJの裁定への対応方法については多くの疑問が持ち上がっていることから、当ツールおよび関連するプロセスは今後変更する可能性がある」と述べている。

 Googleは複数の記事のリンクを削除した翌日、一部のリンクを復活させた。これに対し、Googleの削除プロセスがあいまいで透明性に欠けるとの批判が高まっている。また、リンク削除がEU向け以外の例えば米国サイトには反映されないこと、削除によってむしろ忘れてほしい過去の出来事が注目されてしまうことなどを指摘する声も多い(関連記事:Google、「忘れられる権利」に基づくリンク削除を一部復活)。