「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」が一般企業に広がりつつある。購買から財務・経理、人事まで様々な分野で効果を発揮する。先行する金融機関よりも導入のペースが速まる可能性もある。
この連載では「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション」について実践的な内容を説明している。前回はRPAをどんな業務にどのように適用するのかを、金融機関の事例を挙げて紹介した。
今回と次回は一般企業におけるRPAの導入例を、主な部門や業務の観点から整理して紹介する。まずは購買、財務・経理、人事、給与・経費管理の4分野を取り上げる。
RPAユーザーの大半は一般企業
RPAを先行して導入したのは金融機関だが、一般企業での導入例も増えている。筆者の所属するNTTデータが手掛けた案件の契約先を見ると、RPAを導入した企業・組織のうち、一般企業が80%を占める。金融機関は19%、公共機関は1%である。この割合を見る限り、RPAユーザーの大半は一般企業だと言える。
先行企業は既にRPAの全社展開を進めている。2017年上期にPoC(概念実証)を検討・実施した企業もRPAの全社展開を始めており、数百ライセンス規模でRPAツールをオーダーする企業が少なくない。
金融機関に比べ、一般企業はRPAに関する管理や統制の強化よりも、各部門における自主的な取り組みを尊重する傾向が強い。幅広い業務を自動化しようとする意欲も旺盛だ。このため、RPAが普及・浸透していくペースは速いと考えられる。
現状では金融機関と同様、本社業務への適用が中心である。ERP(統合基幹業務システム)などの基幹系システムやグループウエア、ワークフローシステム、その他の個別開発システムなどを自動化の対象としている。
事例1:購買 作業時間を削減、ミスも激減
導入分野の1つ目は購買である。ここでは商社が部材の注文処理を自動化した例を見ていく。
この事例では以下4段階の処理をRPAで自動化している。
- 部材に関する注文情報を取りまとめる
- 発注先メーカーのWeb型注文受付システムを開く
- システムに注文情報を登録する
- 注文報告を担当者に送る
RPAを導入する以前は注文情報の転記入力処理を手作業でこなしていた。このため入力に時間を要するだけでなく、入力ミスが多発していた。システムのレスポンスが遅く、作業中に多くの待機時間が発生したため、担当者のストレスも大きかった。
だが、対象システムは取引先が提供しており、システムを改修することはできない。この商社は担当者を増やし、交代制で対応していた。
この作業をRPAで自動化したところ、作業時間を削減できたことに加えて、入力ミスも激減した。待機時間に伴う精神的負担から解放され、担当者も喜んでいるという。